MCR『我が猥褻、罪なき罪』






   




《演劇》MCR




タイトル: 『我が猥褻、罪なき罪』



作・演出: 櫻井智也


■■出演


諌山幸治(ブラジル) 
金沢涼恵

石澤美和
  澤唯(サマカト)



堀靖明  
本井博之


櫻井智也
  おがわじゅんや
  北島広貴



上田房子  
伊達香苗




■■スタッフ


舞台監督:川田崇  舞台美術: 袴田長武


照明: 久保田つばさ  音響: 葵能人


宣伝美術:メリケンサック  制作:塩田友克・MCR




■■日程・場所


2015年11月11日(水)-15日(日)@下北沢 駅前劇場





 《感想文:人類とは何か!?》




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(1)

面白かった! 他に類を見ない独特の世界観。チラシがすごいことになっていたので心配したが、真っ当にスゴかった! ここ最近の櫻井智也さん、キレッキレ☆





【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(2)

今回出てくるのは何かを背負って生きている人びと。人って過去の成功体験や失敗体験がしばりとなって、無意識のうちに行動を規制してしまっている。そういうことが積み重さなって人格が形成される。





【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(3)

簡単な話、例えば野球で内角ばかり執拗に攻められると外角に踏み込めなくなるとか、失恋すると失恋をひたすら繰り返す負のスパイラルにはまるとか、恋愛に億劫になるとか、こういう条件反射的な習性っていうのが生活、人生レベルでも根強くある。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(4)

今回出てきたのは曲者ばかり。性格は素直で、責任感もあり、物わかりもいいけど、行動力がないダメ人間。大きなダメージを過去に受け、それが縛りとなって考え方がズレてしまった人。ヤクザ、彼らは反社会的勢力といわれるけど、彼らなりの社会と秩序があって彼らなりの生きる術を持っている。



このように多種多様なしばりをもつ人びと、異なるコミュニティに属する人びとが錯綜し、一堂に会して交わり合うのが社会。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(5)

あと面白いのが個々の人格だけではなく、人と人の相性。例えば、先輩後輩、会社の同僚、夫婦、家族、友達、先生&アシスタントといった関わり方の違いによって異なる人格が発動する。対外的にはひたすら頭を下げている人が先輩後輩の間柄になった途端に高圧的な態度に切り替わったり、特定の人とはよくしゃべるけど親とは一切話さない娘など。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(6)

櫻井智也さんはこういうところの人間観察からセリフに落とし込むところまでが実に巧み。テーマが明確だからセリフの質を高められるというのはあるけど、なかなかできないと思う。これ、いわゆる才能だと思う。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(7)

前回の『死んだらさすがに愛しく思え』も面白かった。


『死んだらさすがに愛しく思え』感想文




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(8)

ただ『死んだらさすがに愛しく思え』はアメリカの凶悪犯罪、連続殺人犯というモチーフがしっかりしているからまだ作りやすい。しかし、『我が猥褻、罪なき罪』は贖罪をテーマにしているとはいえ、参考作品があるようでないから、今回のように緻密に作るのはけっこう難しいと思う。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(9)

あ、あと俳優。人格、相性、俳優。俳優ってのはどの属性に入るのだろう? 分からないけど、どの俳優が演じて、どの俳優とどの俳優が関わるかによって化学反応がまったく異なる。



【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(10)

今回は主役の諌山(諌山幸治さん)がほとんどはけることなく出ずっぱりで、なんか肩の力を抜いた独特のセリフ回しで時折誤作動を起こすような感じで基調をつくり、そこにいろんな俳優がぶつかってくる。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(11)

舞台進行中、観ていてギアが入ったというか、パッと目覚めたのがスズエ(金沢涼恵さん)が出てきたところ。妙にはきはきとしっかり筋を通しておかしなことを言うものだから、何これ? 天然? いやいや単なる天然ではないでしょ??? このあたりから頭のなかがぐわんぐわんしてきた。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(12)

役者はそれぞれ役どころがあるのだけど、声を荒げてバチバチやったり(堀靖明さん、石澤美和さん)、冷静に斜に構えて解説したり(澤唯さん)、何かに取り憑かれている、新興宗教の空気?、そういうのを醸し出したり(本井博之さん、伊達香苗さん)。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(13)

そして組み合わせの妙。すっとぼけた感じの諌山&ガンガン行くぜ堀靖明、不思議ちゃんスズエ&ガンガン行くぜ石澤美和&すっとぼけ諌山、新興宗教ふう夫婦(本井博之&伊達香苗)&罪人諌山&クール澤唯、ガンガン行くぜ堀靖明&ガンガン行くぜ石澤美和,etc.




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(14)

あと、例の漫画家のシーン。今回は漫画家トリオ(櫻井智也さん&おがわじゅんやさん&北島広貴さん)に加えてアシスタントの上田房子さんがいたから、「上田さんがいると助かるわー」というセリフの通り、3人の掛け合いに絶妙の相づちが入ってリズムがよかった☆




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(15)

あっ、この漫画家のシーンってMCRでは毎回あって、毎回不思議なひとときで、今回は主人公の諌山と漫画家が友達ということで「友達のシーン」ということになっていたけど、なんかすごく幻想的というか、諌山の頭のなかが描かれているというか、マンガで言えば独白のシーンというか、フロイトユングか知らないけれど、心理描写的でけっこう重要!!




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(16)

さてさて、このように人と人の連鎖や化学反応を徹底的に稽古して、ひたすら繰り返して創り上げている訳だから演劇以外の何物でもないのだけど、やっぱりそこには人間活動、社会の縮図がある。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(17)

あと印象的なセリフとして、「あんたは格闘技じゃないとダメなんだってば」というふうのがあって、これ、特に演劇を観ている時にいつもおもうことで「こいつらは演劇じゃないとダメなんだってば」って。で、「演劇のときのこいつらは最高だよ!!」っていつも思う。これって、すごく「生きる!!」ってことを感じさせるし、ま、まさに社会の縮図だよね☆




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(18)

さて、 櫻井智也さんは特殊な世界(プロレス)、異常な人(連続殺人犯)などを扱っていて、『我が猥褻、罪なき罪』も異常な人たちが出てくる。けど、この異常さがけっこう身近というか、僕だってこの舞台に出ててもおかしくないと思えるから、けっこうリアルというかゾクッとする。




【演劇】MCR『我が猥褻、罪なき罪』(19)

MCRは社会派というのとは違うよね。『我が猥褻、罪なき罪』は人類学的な洞察がベースとなっているし、パラドックス定数や青年団の作風とも違うし、まだ適当な言葉が見当たらないけど、MCRにしかない色が確かにある。次回作もたのしみ☆



熱演! アッパレ!



ありがとうございました!!






   MCR過去公演 《感想文》



死んだらさすがに愛しく思え


言うなればゲシュタルト崩壊













阪根タイガース


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