保坂葉『僕らの声の届かない場所』




 



創英社さんが本を届けてくださいました!



■ 保坂葉『僕らの声の届かない場所』



■ 創英社さんは演劇界で活躍する人びとの作品の書籍化に力を入れていて、劇作家の保坂葉さんもそのひとり。



■ 実は、以前ゲラを読ませてもらったのです。はやく本になったらいいなってずっと思っていたのですが、実際にできた本をみると著者と同じくらいうれしいものです。



■ みなさまも、ぜひぜひ!!!



■ ゲラを読んだときの僕の感想をアップしておきます。かなり上から目線ですが....





   《感想文:“ 物語 ” の構築力と構成力》



ほさかよう「僕らの声の届かない場所」
読了しました。
すごくよかったです。



ほさかさんに対して褒め言葉になるかどうかは分かりませんが「テレビドラマ」でぜひ観たいと思いました。もちろん小説でもいいのですが、舞台でもなく、映画でもなくテレビドラマ。読んでいるとテレビドラマのシーンがものすごく明確に浮かび上がってきて、テレビドラマを観ているような気分で最後まで読み切りました。



これは褒め言葉と取って欲しいのですが、「僕らの声の届かない場所」はストーリーが明確だし、1つ1つのシーンがすごく明快にイメージできるんです。だからテレビドラマのように読める。それが夜虫が出てくる抽象度の高いシーンであっても。



小説には小説にしかできないことが確かにあって、そういったことを目指すのもいいですが、「僕らの声の届かない場所」はこれはこれで完成度が十分に高いので良いと思います。



次に、プロの画家に読ませて同感してくれるかどうかという問題があるかもしれません。これについては同感してくれる人もいれば、否定する人もいると思います。「僕らの声の届かない場所」の画家たちとは全く異なるアプローチで絵を描いている画家ももちろんいるでしょう。



また絵画コンクールというのが、これほど明確な審査基準ではなりたっていないと指摘されるかもしれません。若手の登竜門VOCA展などを観るとコンクール自体が迷走しているように感じられます。昨今の現代美術界は混沌としていて、「僕らの声の届かない場所」のような良い意味でのドラマが生まれにくい負の場所だという気もします。



ただ、そういった否定的要素はあるにせよ、ほさかさんが「僕らの声の届かない場所」で絵画を通して描いた人間模様は的確で説得力があります。だから、この作品は小説を読む、あるいはドラマを観るという固有の体験として価値があります。



名村、桜坂、児島という3人の画家の設定も面白いし、みどりというごくふつうの感性を持っている女の子と、茜というちょっと特殊というか繊細な感性を持っている女の子という設定、そして朽葉という超人間的な眼力の持ち主と、水元といういわゆる目利きの2人という設定。このあたりもうまいと思いました。



そしてエンディングも捻りが効いていてよかったです。こういうストーリーって最後が難しいというか白けてしまうというか、安易なハッピーエンドか、絶望かのどちらかになってしまうのですが、これをうまくすり抜けて、、、やられたと思いました。



最後に余談ですが、最近僕が読んで面白いと思ったのは「新潮6月号」に掲載された柴崎友香さんの「ハルツームにわたしはいない」という小説です。これも絵画的と言える作品なのですが、ほさかさんとは全然違う描き方です。こちらはもう本当に小説でしかできない、そういう描写です。ストーリーらしきものがほとんどないけど、読了したとき、まるで絵を見ていたような不思議な印象だけがふわふわと残っているという。



ほさかさんのような小説もあれば、柴崎さんのような小説もあります。いろんな小説が本屋では売られています。そんないろんな小説を売っている一書店員である僕が「僕らの声の届かない場所」を読んで、「読んでよかった!」と思ったのだから、よいと思います。はい。




   ほさかよう


   創英社


僕らの声の届かない場所

僕らの声の届かない場所









阪根タイガース


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