路字






変わりゆく町のなかで、足下から考える


   路 字

A3の紙一枚だけの小さくて軽いメディアだが、一枚の薄っぺらな紙でどれほどのことができるかを、これからも気負わずに試していきたい。(仲俣暁生


当店でも配布いたします。

(当面7F芸術書コーナーにて展開します。)



先日、編集者の藤原ちからさんが来店された際に頂いた《1号》をざっと読みました。下北沢の路地にオープンした古本屋店主へのインタビュー、自転車コラム等、流通している書籍・地図には書かれていない町の姿が、書籍でも雑誌でもムックでもない、A3用紙たった一枚のフリーペーパーで発信されています。以下、僕のお気に入りのフレーズをアップしておきます。


新宿の会社に勤めていたとき、朝十時頃、花園神社を歩いていたら、紅テントの脇に停まっているスクーターに、白塗りの唐十郎さんが跨ってるのを見かけたんです。「もうお芝居始ってるんだ!」って興奮しました。(K)

N かつては新宿のゴールデン街とかが機能していて、あそこにいけば誰かがいて、というのを町が担保していたでしょう。でもそれがいまは、町の力が衰えて、それを個々の店の創意が補っている気がする。


O 今日の古本屋さん(吉祥寺「百年」)でのイベントもそうかもね。お店の中に、町をもうひとつ作ろうってことでしょう。


F 本当にそうですね。「路字」では、それをもう一度、町に戻すことをしてみたいんです。そのためにも、自分たちで自由に小さなイベントがやれる場所をたくさん作りたい。

O 東京って視線を変えてみるとすごくいろんな発見があって退屈しないですよ。表には見えてないで隠れているから探しだすおもしろさがある。たとえば「のりしろの町」とか。大久保と早稲田のあいだとか、池袋と護国寺のあいだとかに町と町のつなぎ目になっている町があるでしょ。そういう部分に注目すると地図が反転してくるのよね。


F 下北沢の周辺にも「のりしろ」がたくさんありますね。茶沢通りを南に歩けば三軒茶屋だけど、その間には太子堂と呼ばれる地区があるし、環七のほうに出れば、それこそ保坂和志の「東京画」という小説に出てきた小さな商店街がある。


O そうやって電車の路線をはずれて歩いていると、突然、商店街がポッと現れることがあるのよ。「陸の孤島商店街」って呼んでいるんだけど、たいがい旧街道なんですよね。


K 世田谷だと深沢のあたりとか。中野だと鍋屋横丁とか。


F 昭和初期の路線図をたまたま見たんですけど、当時はまだ井の頭線が開通してなくて、逆に、今はなくなった路線もあったみたい。電車の路線が変わると人の流れも変わる。人の流れが変わると陸の孤島もできる。面白いですね。

※ O = 大竹昭子(作家)
  N = 仲俣暁生(「路字」編集人)
  F = 藤原ちから(「路字」大番頭)
  K = 駒井麻衣子(編集者、ライター)










阪根タイガース


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