『エクス・ポナイトvol.2』レポート第2弾








『エクス・ポナイトvol.2』





TALK

岡田利規 × 本谷有希子佐々木敦 「リアルなものの行方」
鈴木謙介 × 栗原裕一郎 × 仲俣暁生 + 藤原ちから 「ゼロ年代のJ論壇をめぐって」
古川日出男 × 円城塔佐々木敦 「「小説」をヴァージョンアップする」


●LIVE

d.v.d
フルカワヒデオプラス(古川日出男 + 植野隆司(テニスコーツ)+ イトケン(d.v.d) + 戸塚泰雄)
ヘアスタイリスティックス a.k.a 中原昌也


●DJ

鈴木謙介
仲俣暁生
佐々木敦
スズキロク
ヤノピヤノ
and more???


●日時

2008. 7.25(金)open / start 18:00〔終了〕


●会場

渋谷 O-nest


●主催

HEADZ



《フルカワヒデオプラス(古川日出男 + 植野隆司(テニスコーツ)+ イトケン(d.v.d) + 戸塚泰雄)》




モンキー ビジネス2008 Spring vol.1 野球号

モンキー ビジネス2008 Spring vol.1 野球号


《LIVE》古川日出男






か・い・ぶ・つぅううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!







《ヘアスタイリスティックス a.k.a 中原昌也




ニートピア2010

ニートピア2010


《LIVE》中原昌也






ウォォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!









《私の感想》



文学青年礼讃









ところで、全国の小学校でちびっ子が数字を言う度にアホになって先生が困惑しているそうですね。物騒な昨今において、久々の明るい話題じゃないですか。


アホが全国制覇を成し遂げたのって何年ぶりの快挙だろう?私のテキトーな記憶によれば、全国の坂田さんがアホになって以来だから相当経ってますよね。



世界のナベアツおめでとう!!

というホットな話題を私は、張子師でミュージシャンの五十嵐祐輔さんのブログを読んで知ったのですが、いや、私は最近この方のブログを毎日読んでいて文体まで伝染ってきているのですが、その五十嵐さんもどうやらエクスポナイトの会場にいたらしいのです。


そういえば、最近毎日みるようになったブログにもう1つ写真家の福居伸宏さんのブログがあります。福居さんとはメールのやり取りをしたことがありまして、先日行われた展覧会の会場でおち合って話をする予定でしたが福居さんのお仕事の都合で残念ながら叶いませんでした。が、しかし最近のブログを読んでいると私も行きました「組立」永瀬恭一×古谷利裕 展@masuii R.D.R galleryにもいらしていたようで、どうやら行動範囲が結構かぶっているしニアミスということも多々あるようなのです。なんだかキツネにつままれたような気分です。


ところでキツネってどこを抓むんですかね。鼻か?ほっぺか?それはないですね。奴のことだから正面からはこないでしょう。だったら首筋?う〜ん、確かに首筋をつまんだ時のギュギュっとした反応はキツネ好みだと思うのですが、ちょっと距離が近いんですよね。だったら距離をとって膝?いや、膝カックンはしてもつまみはしないでしょう。だから私が思うに、たぶん横腹なんですよ。ちょっと贅肉がたぷついたあたりをキュッとつまむんですよ。きっと。


まあ、そもそもキツネの手では抓めないというだけの話ですがね、ね、ほら、文体が五十嵐さんっぽいでしょ。伝染るんです!で、その例の五十嵐さんもエクスポナイトの感想を書いているのですが、なんと意見まで伝染るんです!!(前フリなが)



そう、《エクスポナイトvol.2》のMVPは、


作家の古川日出男さんでした!


おめでとうございます!!



なお、優秀賞は中原昌也さん(佐々木敦さん大絶賛!)、ベストドレッサー賞本谷有希子さんでした(チャーリーさんごめんなさい)。



皆さん、おめでとうございます!!






あの〜、古川さんを作家と断りましたがこの日はなんですか、


《LIVE》古川日出男




か・い・ぶ・つぅううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!




ギ・ン・ザァァアアアアア!!!!!!!!!!!!!!




シ・ブ・ヤァアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!




って絶叫してあちらの世界へ行ってらしたので、歌手?と呼んだ方が相応しいかもしれません。この前、渋谷リブロの《路地フェア》でひっかけた『サマーバケーションEP』なんてすごく可愛らしい装丁の本を持っていて、少し読んでますけど、、、、どちらさまですか???っていうぐらい違う人でしたね。













まあ、こんな具合に《古川日出男さんのライブ》にとてつもなくデカイ衝撃を受けた訳ですが、古川さんの《朗読パフォーマンス》を私はどういった文脈で評価しようと思うかと言えば、ベタですけど『声に出して読みたい日本語』齋藤孝草思社)というベストセラー本の延長上にまずは見据えたいのです。




声に出して読みたい日本語

声に出して読みたい日本語



彼は然し、女のふっくらとした重味のある乳房を柔らかく握って見て、云いようのない快感を感じた。それは何か値うちのあるものに触れている感じだった。軽く揺すると、気持のいい重さが掌(てのひら)に感ぜられる。それを何と云い現わしていいか分からなかった。



「豊年だ!豊年だ!」と云った。



そう云いながら、彼は幾度となくそれを揺振(ゆすぶ)った。何か知れなかった。が、兎に角それは彼の空虚を満たして呉れる、何かしら唯一(ゆいいつ)の貴重な物、その象徴として彼には感ぜられるのであった。


志賀直哉『暗夜行路』)



この本は、このような文豪による味わい深い文章をひとりで、いやみんなで声に出して詠みましょう!というコンセプトで編集された名著です(残念ながら上記の志賀直哉の名文は載ってませんが)。


小学校の教科書を朗読した記憶は誰もが持っているでしょうが、あまりいいものではないですね。湿っぽい感じがして楽しくない。でも、この本に載っている文章は総じて詠んで楽しいのです。例えばコレ。





羯諦羯諦(ぎやていぎやてい)、 


波羅羯諦(はらぎやてい)、 


波羅僧羯諦(はらそうぎやてい)、 


菩提薩婆訶(ぼじそわか)



般若心経(はんにやしんぎよう)


楽しいですね。お経のフレーズですが、小さい頃、じいちゃんがお経を詠むのを聴いていて、いつもここで笑いをこらえるのに必死だった記憶があります。


この本は、こうした日本語の名文を声に出して詠んで、身体の奥深くに埋め込み、生涯にわたって折りに触れてその輝きを味わおうというのです。素晴らしい本だと思います。



ただし、齋藤孝さんに1つ注文があります。ズバリ言えば「これは齋藤さんの教育学者としての《ネタ》」に留まっているという点です。


まず、この本を作ろうと思ったら膨大な知識が必要です。文学と一括りに言っても古典から現代まで、その他、歌舞伎や能・狂言、落語、お経に至るまで実に様々な出典が見受けられます。しかも、全部引用していたら大変なことになるので要領良く抜き出してまとめる必要があります。これだけの能力を兼ね備え、作業を実行できる人というのは希有であり、これはもうリスペクトするほかありません。


この点は、なにも僕がそうしなくても世間が認めてますし、実際にものすごく売れたことからも明らかです。しかし、それと同時に齋藤さんの欠点もみんなちゃんと分かっています。それは齋藤さんのあの鼻声で朗読されても全然感じないということです。あの鼻声で「お腹から声を出して詠みましょう!」と言われても無理です。身体、身体って、あの華奢な体で四股ふまれても、まあ週に1回ぐらいはジムで鍛えているかもしれませんが、その程度でイチロー選手がどうだこうだ言われても、私たちの筋肉はピクリとも反応しません。


我々はこのような性質を俗に「東大法学部的頭の良さ/悪さ」と皮肉って呼びます。嫉みと僻みとが籠もっているので、7割ぐらい削って受けとめてもらうとよろしいかと思いますが、あながち間違った指摘とは言えないと思います。



以上、齋藤孝さんを槍玉に挙げましたが、私も同じくお腹から声が出ないタイプですし、そもそも、そんなに完璧な人なんていないんです。だから、なんでもかんでも1人でやろうとするのではなく、自分の能力をわきまえて自分のできる範囲で、ウソをつかないで、社会に貢献するのがよいと私は思っています。


そして『声に出して読みたい日本語』ということで言えば、これは齋藤孝さんではなく、古川日出男さんが文句ナシのチャンピオンです。あと中原昌也さんも加えればもう最強です。ぶっちゃけて言えば、この2人がいれば『声に出して読みたい日本語』という本はもうなくてもいいんです。全国のちびっ子に2人の《ライブ》をぜひ聴かせてあげたい!




昼間の陽が差し込む体育館に全校生徒を集めて「さあ、古川さんお願いします!」というのはちょっとツライかもしれませんが、O-nestへ、まあラブホ街を小学生がぞろぞろというのはいかがかと思いますが、そこは目をつぶって、とにかくあの場にガキどもを詰め込んで、ビール片手にはマズイから、オレンジジュース片手に、「んっ?嫌か」「じゃ、アップルジュースでどうだ?」「んっ?パイナップルジュース?コーラ?」「ええい、ちくしょう!それぐらい何でも用意してやるから、とにかく聴け!!」



《LIVE》古川日出男






か・い・ぶ・つぅううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!




《LIVE》中原昌也






ウォォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!






ちびっ子の脳天をかち割って、身体の奥深くにグサリと刻み込まれることでしょう。この叫び、この雄叫び!!そして彼らが物心つく頃、「文学なんて興味ねえー、芸術なんて関係ねえー」とは言わせねーぞ、このヤロウ!!




青年A:「太宰ください」



書店員:「はい。かしこまりました」



青年B:「漱石ください」



書店員:「はい。かしこまりました」



青年C:「岡田利規ください」



書店員:「岡田さんもいいですが、古川日出男さんはどうですか」



青年C:「岡田利規ください」



書店員:「はい。かしこまりました」



青年D:「何かオススメありますか」



書店員:「中原昌也さんはいかがですか」



青年D:「それじゃ、本谷有希子さんください」



書店員:「はい。かしこまりました」



書店員:「ありがとうございました。またお越しくださいませ」



なんて素晴らしいよのなかだろう。




少なくとも書店員にとっては。







※ photo by montrez moi les photos


《追記》



確かに古川日出男さんの《朗読パフォーマンス》を単なる「パフォーマンス」と括ってしまうと不毛です。私も記憶にありますが例えば美術で、「画家がアトリエに籠もって絵を描いていても仕方がない。世間ずれが激しく、そんな状態でいくらうまい絵を描いても世の中は変えられない」という反省から、画家が路上に飛び出してパフォーマンスをしたりインスタレーションをしたり、「ホワイトキューブ(美術館)という制度がなんぼのもんじゃい!」と大地に飛び出してアースワーク等を展開しました。


そして、これらの活動はそれなりの成果をあげたのですが、成れの果は悲惨です。もう「なんでもあり」で何が美術だか分からなくなり、滅茶苦茶になってしまいました。それで結局、画家にとって絵を描くことはやっぱり大切だということになりましたし、私は建築をやってましたから「建築家はやっぱり図面が引けないとダメだよな」って反省しました。


だから古川日出男さんの場合も、彼は《作家》であり、かつ《朗読パフォーマンス》を行ったという点が重要なのです。そして本稿で私はこの《朗読パフォーマンス》を「良い意味での表現主義」の文脈で評価しましたが、それ以外にも、《声の一回性》、並びに《書くこと(テクスト/文体/身体)》との関係性という方向へ論を展開しても面白いでしょう。


さらに佐々木敦さんがユリイカで《インプロヴィゼーション(即興)の解体》というテーマで連載をしていますが、こういった視点から古川日出男さんの《朗読パフォーマンス》の意味を見出すというのも面白いかもしれません。


このあたりは作家よりも批評家の仕事とも言えます。私もその端くれとして活字化するよう心掛けねばなりませんね。









※ 古谷利裕フェア、やってます!!

阪根タイガース


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