庭劇団ペニノ『太陽と下着の見える町』
《演劇》庭劇団ペニノ 18th本公演
タイトル: 『太陽と下着の見える町』
作・演出: タニノクロウ
■■出演
久保井研(唐組) 山田伊久麿
佐野陽一(サスペンデッズ) 間瀬英正(ユニークポイント)
大久保宏章(自己批判ショー) 森準人
高橋ちづ 内田慈
五十嵐操 坂倉奈津子
寺田ゆい 笹野鈴々音
■■スタッフ
構成:タニノクロウ 玉置潤一郎 山口有紀子 吉野明
美術:田中敏恵 照明:今西理恵(LEPUS)
音響:中村嘉宏 衣装:中西瑞美
小道具:横河奈保子(Y's factory)
演出助手:森準人
舞台監督:矢島健 大川裕
舞台監督助手:大地洋一
音響操作:佐藤こうじ(Sugar Sound)
演出部:井上悠
衣装部:正金彩 保田美路加
大道具:C-COM 櫻井敏郎
小道具:高津映画装飾 佐田丘仁子 井佐みずほ
照明協力:ART CORE
制作:中山静子 制作補:三好佐智子
■■日程
12月5日(土)〜12月13日(日)
■■場所
《感想文:リベンジ!》
これは間違いなくタニノクロウさん以外には作れないし、あの俳優陣の質の高さなくしては実現しない作品だと思う。ただ、この作品を受けとめられるかと問われると答えにつまってしまう。物語がないとか、そういうのは全然平気だけど、「タニノさんがこの作品をお客さんにみせたいという積極的な動機がどこにあるのだろう?」という問いを私なりに考えてみたけれど答えられなかった。 この作品をタニノさんのイマジネーションの賜物とみるか、単なるオナニーとみるか、タニノさんが精神科医でもあるだけに、様々な判断を経てあのようなみせ方になっているだけに、問題の難しさを思い知らされた。
ではなぜ今回のタニノ作品は受け入れ難く、神里作品、松井周作品については抵抗がなかったとは言い切れないが受け入れることができたのか? 直観と言えばそれまでだけど、強いて説明を求められれば2点理由がある。
1つは、作品の軸として通していた「パンチラ」というコンセプトがはずれだったこと。
電車で向かいに女の人が座ると思わず股間に目がいってしまうという挙動は面白いと理解できるけど、その裏付けとして女性の下着の歴史を劇中で語られるのは、よくできるタイプの学生のレポートを読まされるようで正直キツかった。そっちへ持っていくのか、、、
もう1つは、精神病患者をありのまま描いたということ。これは精神科医であるタニノさんだからこそ描けることではある。少なくとも演劇で描ける人は他にいない。それは認める。しかし精神科医であるという特権をこのように使うべきなのかという疑問もある。確かに精神病院をみたこともない作家がデタラメに描くことに対する有効な批判にはなるだろう。けれども、観客は「おお!これが真実の姿か!」と感心することはないし、正直困ってしまう。
またもう一段難しい問題として、タニノさんは医者なので治療方法も知っているのだけど、その治療についてはあえて一切描かないという判断をしたということ。その治療自体正しいとは言い切れないので劇中では描かず、ありのままの姿をみせるに至ったということ。ふつうの人ならばこのような次元で悩む必要はないのだけど、それでも精神科医であるタニノさんにはあえて問う。精神病患者のようすをありのまま見せる、それがどういうことなのか?
観客は「おかしい」と思う、いや「これこそが真の姿なのだ」と思う、いや「おかしいとか真とかじゃないんだ」と思う。いやいや、いろんな感じ方があってそれでいいのだ、いやそれでいいのか、、、
今回のタニノ作品を観劇後、私は神里作品、松井周作品を果たしてちゃんと受けとめられているのだろうか? そんな疑問が自らのなかから浮上してきた。正直に言えば、NOかもしれない、、、
う〜ん、もう少し時間をください。思い当たる作品(小説)がいくつかあるのでそれらを読んでみます。あと庭劇団ペニノについても他の作品をみせてください。
次回公演『アンダーグラウンド』観に行きます。
P.S.
12月8日の昼公演後のトークに中井美穂さんが出てきたんだけど、すごかった。さすがプロ。すっごい微妙な作品で会場の空気が重かったんだけど、そんな空気をふっとばして20分間ちゃんと演出家にインタビューしてつっこんだ質問もして笑いもとってという感じでとにかくすごかった。あの話術は見習いたい。
※ photo by montrez moi les photos
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