イキウメ『見えざるモノの生き残り』
《演劇》イキウメ 新作公演
タイトル: 『見えざるモノの生き残り』
作・演出: 前川知大
■■出演
窪田道聡 板垣雄亮
森下創 有川マコト
盛 隆二 岩本幸子
浜田信也 伊勢佳世
■■スタッフ
美術:土岐研一 照明:松本大介
音楽:安東克人 音響:鏑木知宏
衣裳:今村あずさ 演出助手:石内ケイコ
舞台監督:谷澤拓巳
制作:中島隆裕 吉田直美
演出部:宇野圭一 棚瀬 巧 渡邊亜沙子
ヘアメイク:前原大祐
照明操作:鳥海 咲 宮田正芳
小道具:高津装飾美術 映像制作:原口貴光
大道具製作:C-COM舞台装置 宣伝美術:末吉 亮
宣伝写真:渡邊マコト 舞台写真:田中亜紀
■■日程・場所
[東京公演]
12月2日(水)〜12月7日(月)@紀伊國屋ホール
[大阪公演]
12月17日(木)〜20日(日)@HEP HALL
[福岡公演]
12月22日(火)、23日(水・祝)@西鉄ホール
■■チケット購入
《感想文:うれしい再会》
観劇をおすすめします!!!
とにかくうれしかった。ぼくが《イキウメ》がなぜ好きなのか? その答えを改めて実感できる傑作でした。今まで書いた感想をおさらいしておきます。
感想を書いてしまうとネタバレになって一期一会のせっかくの観劇を台無しにしてしまうので、遠回しに5つの視点から解説します。
1.俳優
今回はなんと言っても主役に大抜擢された窪田道聡さんでしょう。先輩格にあたる浜田信也さんを意識しながら演技を磨いてきたというのはすごく分かりますし、イキウメスタイルの俳優としてググッと力をつけてきたと実感できる舞台です。要チェック!
あとうれしかったのは前回の『関数ドミノ』では見せ場の少なかった森下創さんの演技を堪能できること。三枚目俳優として今回は安井順平さんは残念ながら出演されてないのですが、森下さんや板垣雄亮さんがいい味出してます(笑。。。
そして、イキウメの俳優陣を観ていたら、いままでの感想よりもさらにまえ、建築の現場まで思い出しました。大工・左官・金物職人・石工,etc. 色んな職種の職人が集う現場を。
それで強引ですが建築の話をします。建築家というか設計者が何をデザインするかと言えば、床・壁・天井の取り合い。つまり〈床と壁〉〈壁と天井〉のジョイントをデザインするんです。自分のやった現場の写真は実家に置いてあるので他の現場写真で代用します。
渡辺明『洛陽荘』
床柱の納まりですけど、ここは様々な要素がぶつかります。柱・框・畳・腰壁,etc. それらをどのように納めるか、そこにデザインが発生する訳です。(建築にもいろいろあっていわゆる現代建築では巾木も廻縁もカットしてドン付けとか平気ですからデザインの意識も全然違います)。こういう所を原寸で起こしながらしこしこデザインする訳です。そして空間を立ち上げていくんです。
渡辺明『洛陽荘』
《イキウメ》俳優陣の演技はオーソドックスかもしれませんが、筋がピンと通っています。前川知大さんの戯曲は構成が通るかどうかが命なので、個々の役者の演技がブレたりひるんだりしたらアウトなんです。二枚目、三枚目、個々が個々の演技をきっちり演じながらあいまみえる。そういった1つ1つの、1人1人の、1シーン1シーンの積み重ねです。そして、その1つ1つのクオリティが見事です。演劇ファンだけでなく建築現場や楽団の人にもうけるかも知れません。ぜひ!
2.戯曲
前川知大ここにあり! みごとな構成、みごとな通し方です。『関数ドミノ』の感想でも触れましたが、前川さん=戯曲、僕=評論という違いはありますがプロット(設計図)を書いて文章を書き上げていくスタイルは通じています。最近書いた拙文の執筆プロセスを紹介しておきます。
これを書いた僕が言うので信用してもらえると思いますが、前川さんはもう何捻りか加えたずっとレベルが高いことをやってます。だから僕のような書き手は今回の『見えざるモノの生き残り』を観るとビビッときます。できれば羽生善治さんのような棋士にも観て頂きたい。ビビビッとくると思います。ぜひ!
3.テーマ
これを言うとネタバレになるので言えませんが、ものすごく難しいところを狙ってます。前川知大さんは東洋大の哲学科出身ですからね。100人観たら99人が分からないような作品を創りかねない(汗)。でも、僕のとなりの女の子が観劇後わんわん泣いてました。「すげー! ちゃんと伝わってる!」ってびっくりしました。
でもやはりここでは言えないので遠回しに観劇前の練習問題出しておきます。
[基本問題]
- 作者: 太宰治
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[応用問題]
太宰治『走れメロス』とアラン・シリトー『長距離走者の孤独』を立て続けに一気に読んで感想を述べよ。
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できれば内田樹先生のような思想家にも観て頂きたい。ビビビッとくると思います。ぜひ!
4.関連作品
今日は会場で、岩井秀人(1974年生)さん、松井周(1972年生)さんを見かけました。これに岡田利規(1973年生)さん、そして前川知大(1974年生)を加えた4人。それぞれ作風は全然違いますが、お互い切磋琢磨して作品を発表していけば、これはホントすごいことになる。期待しましょう!
ちなみに今回の『見えざるモノの生き残り』は、ハイバイ「て」(岩井秀人作・演出)を観て演劇が好きになった人にもオススメです。このラインで観れる人はぜひぜひ!!
5.イキウメ特集
紀伊國屋ホールのお向かいの書店で《イキウメ特集》やってます。前川知大さんの選書がチェックできます。今回の『見えざるモノの生き残り』を観劇するにあたってもかなり参考になりますよ。ぜひぜひぜひ!!!
《秋→冬の演劇フェア》
会場:ジュンク堂書店新宿店(7F東側フェア棚)
会期:2009年10月15日(金)〜12月30日頃
小劇場演劇、ダンス、パフォーマンスのレビューマガジン
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