イキウメ『関数ドミノ』






   




《演劇》イキウメ




タイトル: 『関数ドミノ』(アップデート新型2014年版)



作・演出: 前川知大


■■出演


浜田信也  安井順平


伊勢佳世  盛 隆二


岩本幸子  森下創   


大窪人衛  吉田蒼


新倉ケンタ



■■日程・場所


[東京公演]
2014年5月25日(日)〜6月15日(日)@シアタートラム


[大阪公演]
2014年6月20日(金)〜6月22日(日)@ABCホール


[新潟公演]
2014年6月29日(日)@りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場



《関数ドミノ》観劇後、ツイッターで即日連投した感想をまとめてブログ化しました。どうぞ お楽しみください☆☆☆




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 《感想文:ドミノと地震???》






【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(1)

『関数ドミノ』は震災以前/以後で言えば、以前の代表作で、イキウメを観劇したことがない人に「何を観たらいい?」って聞かれたら、僕は『関数ドミノ』って答えていた。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(2)

イキウメ作品で好きな作品を3つ挙げるとしたら、『関数ドミノ』『食べもの連鎖』『表と裏と、その向こう』になる。これらは全て震災以前の作品だ。震災以後がダメだというのではなく、以前は、いい意味で気持ちに余裕を持っていたから、「演劇って楽しい!」って心の底から思えたのだ。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(3)

震災以前/以後というのは、演劇作品自体がやはり違っていて、「死」というテーマを扱う場合、「以前」は一歩ひいて演じる/観ることができたのだけど、「以後」は例え演劇であても「死」から一歩も引けなくなった。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(4)

特に震災以後のイキウメ、前川知大氏の創作スタンスの変化は、はっきりしている。「死/生」に対する意識が高まり、真正面から「死」に挑み、それでも「生きる」ことを訴え続けた。当然、作品を観る側にも、それなりの覚悟が要求された。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(5)

ただ震災から時間が経って、演じる側も観る側も少しずつ「死」と距離を取れるようになってきている。これは震災の記憶が薄れてきているというマイナスの意味もあるけれど、「生」の意識が回復してきたという意味ではいいことだと思う。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(6)

今回の『関数ドミノ』は内容がけっこう変わっているようだけど再演で、前回観たのは震災以前の2009年、今回が2014年。『関数ドミノ』は奇妙な交通事故の話で、「生/死」がテーマの作品だから、再演を観る時期としては震災から少し時間が経った今でよかったと思う。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(7)

『関数ドミノ』が面白いのは、様々な職業の登場人物が出てきて、皆それぞれ世界観が違うというか、生きる上での拠り所が違う。その違いが交錯する様がこっけいで、観ていて思わず笑ってしまう。だけど、決して他人事ではなく、自分のことのように思えてきて冷や汗をかく。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(8)

医者/看護婦/難病患者/予備校講師/保険調査員/無職者。例えば「医者/無職者」の対比で、両者が語っているのを聞いていると、医者は理路整然としていて信用できるのに対して、無職者はオカルト色が強く、「こいつヤバイなー」って思えて信用できない。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(9)

ま、最近は医学界もSTAP細胞の騒動に代表されるように、オカルト色を強めてきているから、この対比がいつまで機能するのか? あやしいけど。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(10)

また予備校のカリスマ講師というのも奇妙な生き物だと思う。先が見えない受験生という弱者に対し、受験という明確な目標を共有し、また1年という期間限定のコミュニケーションだからこそ、意気投合しやすい、洗脳、傾倒させやすいのだろうけど、あれは宗教の教祖に近い。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(11)

イキウメ作品では、こういった人間観察が面白く、『関数ドミノ』ではまた奇妙な事件の謎が少しずつ解きほぐされていく、その展開がスリリングで面白い。だから今回も前回と同様に楽しんでみることができた。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(12)

ただ前回観た時と大きく印象が異なるところが1点だけあって、それはラストシーンだ。今回の『関数ドミノ』のラストシーンは、めちゃくちゃ恐くて…




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(13)

いや、恐いと思ったのは僕だけかもしれない。あれは、黒沢清監督の『LOFT ロフト』の最後で豊川悦司が湖に落っこちてあっけなく死んじゃって、「あーあ」と開いた口がふさがらなくなったというくらいの軽い受けとめ方でよかったのかもしれない。



   




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(14)

でも、とにかく恐かったのだ。というのは、実はというと、あのラストシーンが、僕の震災体験、阪神淡路大震災の体験と思いっきりシンクロしたからだ。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(15)

早朝でまだ寝ていたのだけど、遠くから何かが近づいてくるのが分かって、地震で揺れる前に、動物みたいにちゃんと目が覚めて、「あ、遠くから何かくる」って分かって、この何かっていうのは地響きなのだけど、だんだん近づいてくるのが分かって、




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(16)

「来た!」と思った瞬間「ごぉおおおおおおおおおおおおおおおおお」ってすごい音がして、ふとんをかぶって、体を丸くしてじっとしていたのだけど、とにかく「ごおおおおおおおおおおおおおお」って音が凄まじくて、




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(17)

かなり長い時間続いたけど、「終わった」と思って、布団から出て、家族の安否を確かめたあとで初めて、周りの棚という棚がすべて倒れていることに気がついた。




【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(18)

何十キロもある和ダンスが倒れ落ちていて、ガラスのコップが粉々に割れているのだから、気がついてもいいようなものだけど、地震のあいだはまったく気がつかなかった。よくよく考えたら、あのとき死んでいてもおかしくなかった。




   





【演劇】イキウメ『関数ドミノ』(19・終)

『関数ドミノ』のラストシーンは、『LOFT ロフト』の最後とは、やはり違うのだと思う。あれは演出の前川知大氏の何かしらの判断が働いている。恐怖に怯える真壁とその結末、そこを僕なりに考え続けようと思う。







   《イキウメ過去上演作品の感想文》



『片鱗』


『獣の柱』


『ミッション』


劇評サイト《ワンダーランド》掲載




   『太陽』


『プランクトンの踊り場』


イキウメふたり会『二人の高利貸しの21世紀』


『見えざるモノの生き残り』


『関数ドミノ』


『煙の先』


『表と裏と、その向こう』









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