小松台東『勇気出してよ』






    




《演劇》小松台東




タイトル:『勇気出してよ』



作・演出: 松本哲也


■■出演


瓜生和成(東京タンバリン)


松本紀保


竹井亮介(親族代表)


岩瀬亮


浅野千鶴(味わい堂々)



■■スタッフ


舞台監督:内山清人(サマカト)
美術:泉真
照明:中佐真梨香(空間企画)
音響:田中亮大/角田里枝
宣伝美術:土谷朋子(citronworks)
演出助手:福名理穂(ぱぷりか)
舞台撮影:保坂萌
制作:塩田友克 小松台東
企画・製作:(公財)三鷹市芸術文化振興財団



■■日程・場所


2016年5月20日(金)〜29日(日)@三鷹市芸術文化センター 星のホール






 《感想文》


アラフォーとアラサー




劇場から三鷹駅までは少し距離があるのだけど歩けない距離ではなく、ぽかぽかしたお日様のもとペットボトルのお茶を飲みながら、ゆっくりとゆっくりと歩いた。気持ちよかった。



じわぁ〜〜〜



お芝居で漂っていたゆるやかな時間の流れが日曜日の午後の何にも誰にもしばられることのない束の間のひと時にぴったりだった。



じわぁ〜〜〜



松本哲也さんの作品を観劇するのは、『山笑う』、『想いはブーン』に続いて3回目。どの作品も宮崎弁という場所固有の言葉が飛び交うから、言葉の力が強く、舞台上で展開されるドラマよりも言葉、言葉の物質感といったら言い過ぎだけど、言葉の〈質感〉がすべてといってよい。



ただ、今回の『勇気出してよ』は、いぜん観た2作品とは異なり静かに感じられた。確かに小野といういわゆる九州男児的な気性の荒い男が出てくるのだけど、彼が場の空気を支配することはない。場の空気をつくるのは早坂という40歳を過ぎて未だ独身の男と、ユイという40歳を過ぎて恋人を亡くした女のふたり。そして、もう一組というかまだカップルではないのだけど、30歳前後の男と女。いま風にいえば、



アラフォーとアラサー



それぞれに漂っている



似ているようで異なる時間のブレンド



お芝居に出てくるそんな男女を観ながらじぶんのことを振り返った。






僕が大学を出たとき見えていたのは30歳までだった。30歳までには独立して結婚してなんて考えていて、実際当時は30歳までになんとかしなければその先はないと焦っていた。でも時間なんてあっという間に過ぎて、今から振り返っても20代はけっこう頑張ったと思うのだけど、仕事も恋愛もまったく実を結ばなかった。30歳になったときは、「30歳になってしまった!」と一瞬すごく焦ったけれど、そこはすんなりと過ぎてしまった。30代は20代とは確かに違うのだけど、20代のままのメンタリティーで走ることができて、実際に走り抜けてしまった汗。。。



でも、40代は違う。僕はまだ40代になったばかりだけど、40代ってもう修正がきかないという気持ちが強く支配してくる。30歳で同窓会をやったときはまだいきがっている子もけっこういたし、まだまだみんなどうなるか分からないという感じだったけれど、40歳で同窓会をやったときはみんなもう落ち着いていて、むしろ逆に高校時代に戻ってしまったように感じられた。いい意味でもわるい意味でも。



40代ともなれば、たいていみんな結婚して子どもがいて、仕事でもそこそこのポジションについていてという感じだけれども、みんながみんなそうではなく、まだ結婚していない人もいるし、離婚した人もいるし、仕事がうまくいっていない人ももちろんいる。



前者は問題なし。頑張ればいいんだよ。問題は後者なのだけど、なんというか20代、30代のときのようにガムシャラに頑張るという感じではなくて、前向きではあるのだけど、ガツガツはいかないというか、結婚できなかったり、仕事がうまくいかなかったりというじぶんをある程度受け入れて、そのなかで出来るだけのことはしようという気持ちに変化してきている。






だから、『勇気出してよ』にすごく共感してしまった。



特にアラフォーの早坂とユイに!



早坂っていう男は、はっきりしないなよなよした感じで、何がしたいのか? ユイと喫茶店でちょっとだけ会えればそれでいいのか? 何に希望を持っているのか? さっぱり分からない。



ほんと僕そのものにみえて仕方ない。



またユイも新たな恋をしようという感じがなくて、宮崎から川崎の実家に帰ってどうするつもりなのか? 何がしたいのか? 何に希望を持っているのか? さっぱり分からない。



でも、そういう女性の気持ちもわからなくもない。



対して、アラサーの拓也と沙織は…



拓也も若者らしさが全然なくて、まるで早坂みたいなのだけど、そのやる気がない感じの質が違うんだよねー。早坂はもう何かに抗うっていう感じがまったくないのだけど、拓也のやる気のなさはニヒルっていうか、何かに対する反動、端的に言えば父親に対する反動なんだよなー



沙織もねー、ぜんぜん若者らしさがなくて妙に落ち着いているのだけど、でもやっぱりユイの落ち着きっぷりとは全然違う。ユイと比べるとすごく子どもに見えるし、そして、すごく可愛らしい。



あと小野かー、小野はねー、小野は、まっいっか 笑…



あっ、小野について言えば、小野は小野であれでよかったと思う。これは演技論になってしまうけど、小野は役柄的にもっと九州男児っぽくガツガツガツガツガツガツいったほうがいいとも思ったけれど、あれくらいでいいように思った。空気を読んだのかもしれないけれど、あの喫茶店に流れている時間が染み染みと客席の僕のなかに流れ込んできて、その時間がじわぁ〜〜〜と体内にひろがってくるのを噛み締めていたので、小野はあれくらいでよかった。あれより弱かったら芝居がダレてしまうからダメだけど、あれでよかった。





観劇後もしばらく余韻に浸っていた。





じわぁ〜〜〜





いい作品でした。





ありがとうございました。





最後に芝居のなかの会話にも登場した山崎ハコさんの歌を一曲。ハコさんは横浜ではなく大分県出身なのかー。宮崎県のお隣やね。















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   小松台東







過去作品《感想文》



小松台東



想いはブーン


僕たちが好きだった川村紗也




山笑う













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