大久保亜美『ワールズダッチ』





青年団若手自主企画 vol.39




タイトル: 『ワールズダッチ』


作・演出: 大久保亜美

出演: 辻美奈子 
    山本雅幸
    海津忠
    桜町元
    中村真生
    シトミマモル(フリー)


スタッフ:
  音響・制作: 野村政之
  照明: 松本大介(enjin-light) 
  舞台: 海津忠
  制作協力: 木元太郎
  宣伝美術: 池田泰幸(sun-ad) 内藤零 長谷川由季 上野敬
  総合プロデューサー: 平田オリザ



会場: アトリエ春風舎


日程: 2008年7月16日(水)〜21日(月)


チケット料金: 予約/2,000円 当日/2,300円


チケット予約: こちらから予約できます。




※ 詳しくは、青年団公式ウェブサイトでご確認ください。

小説は女性作家がたくさんいるのに、演劇は女性作家が意外に少ない。「誰かいるか」と問われれば、本谷有希子さんぐらいしか名前が思い浮かばない。それで大久保亜美さんが作・演出をやると聞いたので、たったそれだけの軽い理由で観に行きました。


観劇をお勧めします。


女性の視点だからこそ書けた作品ではありますが、それを抜きにしてもよくできています。大久保さんの才能の片鱗が随所に感じられました。


初日の今日は、上演後、《青年団若手自主企画》を大久保さんと共に展開している岩井秀人さん、柴幸男さんを交えたトークショーがありました。その際、私からも質問ができたので、今日は感想ではなく、その時のQ&Aをアップします。お楽しみください。






《 Q & A 》



※ 特に問題となるようなネタバレはありません。観劇前に読んでも問題ないと思います。ただし、あくまでも参考までに。


大久保亜美の真骨頂







Q (阪根): 私はここにいらっしゃるお三方の作品を全て観劇しました。皆さん、それぞれ特長があって、柴さんのは『御前会議』を観劇しましたが、しっかりと作られていて、それに加えて「リミックス」、新しい要素を積極的に取入れていこうとするスタンスが感じられました。また岩井さんの『おいでおいでぷす』では「オイディプス王」に上州屋をぶつけるという、およそ有り得ないようなことをガンガンやってやろうという野心を感じました。


そして、今回の大久保さんですが、テーマが「セックス」とか、あまり触れたくない、人間の恥部をあえて扱っていて、どうしても、この点に目が行きがちですが、実はこの作品、構成や演出がすごくよくできています。展開の順序立て、場面のつなぎ方、オブジェの使い方、etc.


それにテーマである「セックス」についても、この手のテーマで言えば、例えば《ポツドール》の場合は、観た後に本当にぐったりしてしまって、もう立ち上がれないぐらいのダメージを受けます。それはそれで良いのですが、今回の大久保さんの作品は、そういったポツドール作品とは全然違います。テーマがよく練込まれているから説得力があって、観劇後、妙な気分ですが、なんかスッキリしました。


このようにすごく良くできた作品で、これを書き切るのは、すごく大変だったと思うのですが、今回これを創り上げてみて、「自分なりに何か突き抜けた」という手応えはありましたか。




A(大久保): はい。今回は創っているプロセスで何度か「突き抜けた」という瞬間があったんです。野村さん(制作担当)と一晩中デニーズで討論した時とか、そういうのが何回かあったんです。でもですね、今回はなんと言っても俳優のレベルの高さによってなんです。青年団でできたということが一番大きい。もともと私は、俳優がどうやったら活き活きと演じられるかを考えるのが好きで、そういう演出をするし、今回はテーマについても、ぶっちゃけ俳優に意見を聞きました。すると俳優の能力が高いから、バンバン返ってきて、こっちを突き上げてくれたんですよ。




Q (阪根): なるほど。あと、演劇の若手作家には優秀な人がたくさんいて、ここにいらっしゃる岩井さんや柴さんをはじめ、東京デスロックの多田さん、五反田団の前田さん、チェルフィッチュの岡田さんなど、各々独自のカラーを築きつつありますが、大久保さんはどのようなカラーを出していこう、あるいはどういった作品を今後、創っていきたいと思っていますか。




A(大久保): 今回1つの試みとして「少女マンガの《独白》」を取入れたんです。もちろん演劇でも「独白」はやりますけど、「少女マンガの《独白》」というのはまた全然違うんです。それを今回やってみたら結構うまくいきました。でも、本当は《独白》なしで、お客さんにちゃんと感じとってもらえる作品を創りたいと思っています。





阪根: ありがとうございました。



※ Q&A以前のトークの内容等を踏まえて多少意訳しました。

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