東京デスロック『リア王』


《第2版》(2009年4月7日)




《へっどらいんにゅーす》



演出家の多田淳之介さんが『リア王』上演後記を書かれています。


やっぱ、この人おもろいわぁ。次に何やって来るかホント期待してしまいます。


多田さんの次回公演はこちら。


 二騎の会『木村家の人々』


 作:  宮森さつき


 演出: 多田淳之介


文中に出てくる多田さん(76年生)より更に若い世代(80年代生)の劇作家・演出家・俳優の大掛かりな公演が始まります。


「キレなかった14才りたーんず」


僕は3つは行けそう。篠田は見ておこう。この子、何やるかやっぱ気になる。

タイトル: REBIRTH#4『リア王



作:  ウィリアム・シェイクスピア



構成・演出: 多田淳之介


翻訳: 松岡和子

 



■■出演


夏目慎也 佐山和泉


石橋亜希子 坂本絢 佐藤誠 堀井秀子 山本雅幸



■■スタッフ


照明:岩城保


舞台美術:濱崎賢二


音響:泉田雄太


宣伝美術:宇野モンド


演出助手:井坂浩 橋本清


衣装:石川夕子


衣装協力:空閑あすか 本戸万里子 相澤正子 埼玉県立富士見高校


制作:服部悦子



■■日程・場所


2009年3月26日(木)〜 3月29日(日)


キラリ☆ふじみ マルチホール


■■チケット販売


東京死錠オンライン販売



《感想》




 



今回の稽古では、「年をとる事」について考えました。結論は「わからない」です。残念ながら実際に自分で経験するまでは、絶対にわからないのだと思います。しかし、演劇でなら少しわかるかもしれません。そういうことが出来るのが、演劇なのだと思っています。(多田淳之介)


30歳前後(アラサー)の若い演出家と俳優達が、80の坂をこえた「リア王」を描いたら、えらいことになってしまった。そんな作品。


舞台のセットをみてギョッとして、オープニングで○○がドーンと流れたところで、「徹底的に錯乱してやるぞ!」といういつも通りの意気込みがジンジン伝わって、「さぁ、来たな!デスロック!!かかってこい!!!」と身構えた。がしかし、、、


これがバッチリ合っちゃうのね。たらこスパゲティみたいにね。シェイクスピアと○○。リア王道と○○道。



これが私の生きる道!!(運命)



まず、端的に指摘できるのは、多田さんだけでなく関美能留さん(三条会)も意識してやっていると思われること。つまり、シェイクスピアを巨匠として崇め奉ってしまったらダメなのね。「シェイクスピア様」じゃダメなのね。あるいは文学で「ドストエフスキー」って言ったら勝ちみたいな、こういう使い方もダメなのね。作品の意味変わっちゃうから。そのフィルターを取っ払うことには成功している。年配の方には少々刺激が強過ぎるかもしれないけれど。


それで意外だったのが、この演出で!? と言ったら失礼だけど、今回はものすごく分かりやすかった。僕の場合は原作を読んでから臨んだのだけど、『リア王』の理解がさらに深まったという感じ。


ケント:「王は、どうしてこんなにわずかな供回りでおいでになったのですか?」


道化:「そんなこと訊くようじゃ、足枷はめられても文句は言えないな。」


ケント:「なぜだ、阿呆?」


道化:「欲得ずくで仕えるやつは
    うわべばかりのご奉公、
    雨が降り出しゃおさらばで
    ご主人様はぐしょぬれだ。
    阿呆はぐずぐず一緒に残り
    利口なやつは逃げていく。
    逃げる悪党は阿呆になるが
    阿呆は断じて悪党にゃならぬ。」


ケント:「それ、どこで覚えた、阿呆?」


道化:「足枷はめられてんじゃないよ、阿呆。」


僕が読んだのは、リア王〜道化〜ケントのいわゆる「阿呆ライン」。道化がいいヤツでね。すっかり好きになっちゃった。でもね、デスロック版『リア王』には道化はでてこないの。声だけなの。なるほどなって思ったね。


演出家の多田さんが読み取ったのは、年寄りと若者との越え難い確執、いわば「新旧衝突ライン」だったわけ。だから道化のプライオリティが下がったとも言えるし、配役の都合上、そうなったとも言える。でも、ちゃんと解釈すると道化は実在させたらダメなのね。ちゃんとした名前も持ってないし。道化をキャラクター化したり、感情移入したら本当はダメなのだと思う。これはシェイクスピア自身が間違っているというか、たぶんサービスしているのだと思う。道化はあくまでも目に見えない存在として描くのがやっぱり良い。あのキャラ捨て難いけど。


それで多田さんのライン取りなのだけど、これがちょっと笑っちゃう。


リア王 ⇒ 裸の王様 ⇒ 老い・痴呆


これを台本に書かれているとおり、実直に描いたらえらいことになってしまって、確かに戯曲を読んでいてもつくづく感じたのだけど、終盤のリア王は酷いなと。それをビジュアライズされた姿で見たら、リテラルに目も当てられなかった。見てはいけないものを見てしまった。


そしてエンディング。戯曲でもいい言葉なのだけど、眼で見たらもっとジ〜ンと来ました。
もう一度、『リア王』を読みたくなりました。


ありがとうございました。



【延長戦】


聞くところによれば、リア王は劇場まで電車とバスを乗り継いで通勤しているそうです。昨日も帰りは、重労働後のリア王と同じバスに乗り合わせました。熱演後のリア王は実にいい顔をしてました。この顔なかなか見れないっしょ。「おいしいとこ、いただきました。本当にごちそうさまでした」。

※ photo by montrez moi les photos







シェイクスピア全集 (5) リア王 (ちくま文庫)

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阪根タイガース


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