ハイバイ「リサイクルショップ『KOBITO』」


《2.1訂版》(7月6日)



 《Headline News》



※ ちょっと観劇の間が空いていますが、いま書店で小説家の福永信さんのフェアを担当しています。そして日記をつけています。よかったら覗いてみてください。


 福永信フェア担当者日記


 ■ 《福永信フェア



アクロバット前夜90°

アクロバット前夜90°



あの宮沢章夫先生がジュンク堂@新宿でトークをなさいます


※ 告知遅れました。すでに満員御礼です。すみません。

※ 当日はいま携わっている写真展のギャラリートークに参加するため、私はお手伝いができません。すみません。

※ 宮沢先生も関連するフェアを芸術担当がやってます。で、写真撮ってきました。



《劇作家はこんな本を読んでいるんじゃないか(憶測)フェア》



 



こ、こりゃひどい。斜向かいの若手書店員が「磯崎憲一郎村上春樹は似たもん同士!」って感じの実に老舗らしいぶっ飛んだフェアをやって、朝日新聞にもスッパ抜かれてましたけど、それに負けず劣らず、こりゃひどい。(あ、斜向かいで例のひどいフェアをやってたTOEIC担当のN川君は、文芸担当にしたほうがいいと思いますよ。エライ人。)





  宮沢章夫 × マルクス !!! 





で、資本論のすぐしたに《ねないこ だれだ》って


この本置いたのだれだ!!!!!


ぜひ、お越しください。7階芸術書コーナーでやってます。



宮沢章夫先生のブログはこちら




 《観劇日記》


タイトル: 「リサイクルショップ『KOBITO』」



作・演出: 岩井秀人

 



■■出演


金子岳憲 永井若葉 坂口辰平 岩井秀人(以上ハイバイ


有川マコト(絶対王様) 岩瀬亮


斉藤じゅんこ 小熊ヒデジ(てんぷくプロ/KUDAN Project



■■スタッフ


舞台監督:西廣奏  照明:松本大介(enjin-light)・朝日一真


音響:長谷川ふな蔵 衣装・小道具;mario


宣伝イラスト:岩井秀人 宣伝美術:土谷朋子(citron works)


制作:三好佐智子・坂田厚子



■■日程・場所


2009年6月5日〜16日

こまばアゴラ劇場


2009年6月25日〜28日

精華小劇場



■■チケット販売


ハイバイHP内チケットフォーム



感想文:《おばちゃんの生態学




 



岩井秀人さんのブログをちょくちょくチェックしているのだけど、「物語」「明快さ」という言葉が頻繁に出てきていたので、今回はイキウメの前川知大さんのような芝居になるのかと思っていたら、五反田団前田司郎さんのような作品だった。ウケた(笑)!


アフタートークのゲストで来ていた前田さんも「僕の好みです」と言っていた。それもそのはず、今回は謎の生命体《おばちゃん》をモチーフにした作品だから。


岩井さんのお母さんがやっているリサイクルショップで働いているおばちゃんたちを描いたというか、じっと観察し続けたというか、それも動物園の動物を観察するような生易しいものではなく、アフリカの大草原で野生の動物を危険を伴いながら観察しつづけるような感じ。アフリカ行ったことないけど。


岩井さん曰く、「実在すると思っていい。ホントこんな感じのときあるんですよ」。とは言うものの、その光景は凄まじい。笑いと恐怖が同時に襲ってくる。最前列で観ていたけど、はっきり言って恐かった。とにかく、《おばちゃん》という生命体が集団化したときのあのハイテンションなパワーほど恐ろしいものはない。しかも、どうやってコミュニケーションがなりたっているのかさっぱり分からない。観察しているとどう見てもディスコミュニケーションにしか見えないのだけど、異常にハイテンションな場がなぜか成り立っている。


《女子高生》は「かわいい」の一言で様々な意思を伝え合うことが可能であり、高度に発達したコミュニケーション能力を備えていると女子高生に詳しい前田司郎氏が以前語っていたが、《おばちゃん》はそれ以上のコミュニケーション能力を備えているとおばちゃんに詳しい岩井秀人氏はこの作品で言っているのだろう。


《おばちゃん》のコミュニケーションはもう言葉を超えている。空気?波動?何かよく分からないけど何かによって成立している。もう伝える/伝えないとかそんなあまっちょろいものじゃないかもしれない。宇宙人が地球に侵略してきたら、東大生なんかではなく、《おばちゃん》を最も高度に発達した生命体と認知することだろう。


さて。このような《おばちゃん》を演劇で表現することは可能だろうか。それはYESであり、またNOでもある。《おばちゃん》の行動原理は、理性からも時空間からも「切断」された突拍子もないもののようだが、実はそんなおばちゃんもそれぞれが背後にちゃんと物語を持っている。例えば、若くして故郷の宮崎を離れ、名古屋に流れついたが伊勢湾台風の被害を受けて家を失い、そして銀座に憧れて東京へ出てきたけれども、なぜか小金井の商店で働いている。あるいは旦那がバブルで大損こいたり,etc.つまり《おばちゃん》はこういった相反する二面性を兼ね備えているのである。


そこで、まず役者に関して言えば、これは極めて適性度が高い。役者というのはそもそも《おばちゃん》的である。台本があって、その通りにやらなければならないにも拘わらず、あたかも台本がないかのように演じることを求められ、それを体得している。だから《おばちゃん》を演劇を通じて観ることは、なかなかのものだ。


今回、特によかったのが金子岳憲さんだ。彼は3月に催された「ハイバイ役者自主企画公演」でも見事な独り芝居を演じていた。それは19日連チャンで働き続けて、明日がやっと休みだというおっちゃんが居酒屋で「やっと休みだよ」とか言って、特に趣味があるわけでもなく、休みに何をするのでもないのだけど、ただ明日が休みだと喜んで、なんでもないことをしゃべり続けるという芝居なのだけど、これが不思議なことにすごくよく伝わってきた。これは台詞になんら意味も価値もないので、つまり役者の演技力によってのみ成立していたということだろう。だから今回もただただ役者の演技力によってのみ、謎の生命体《おばちゃん》が浮き彫りにされたという感じであり、金子さんを始め、役者陣の奮闘ぶりは素晴らしかった。


他方、演出の岩井さんは相当苦労したみたいだし、これからも苦労しそうだ。《おばちゃん》の訳の分からない感じと、個々が持つ明確な物語。これをくっきりと際立たせてやればいいと一見思えるのだけど、そうしてしまうと《おばちゃん》の本質的な部分がなんだか失われてしまう。だから、あくまでも《おばちゃん》の持つ、ごちゃごちゃした感じのなかで明確な物語を展開しなければならないのだけど、そうするとやはりちょっと分かりづらい。さて、どうする、、、


最後にアフタートークで少しだけ質問できた。「今回は大阪公演があるので、大阪のおばちゃんに対抗して、この作品をつくったのですか」って質問したら岩井さんは「いえいえ、そんなことないです。大阪のおばちゃんはもっと凄いって聞いてますから」って恐縮していたけれども、いやはや、これは大阪のおばちゃん以上だと思う。


彼女らはどういった反応を示すだろうか。「まだまだ甘いわぁ」「いやぁーびっくりしたわぁ。負けたわぁ」「こんなおばちゃん見たことないわぁ」etc. 大阪のおばちゃんにぜひ見てもらいたいし、大阪公演が楽しみだ!


オススメとは言えません(怖)

が「観てはいけないものを観てしまう感」たっぷりです(快)

皆様もぜひ!



※ photo by montrez moi les photos





《ニュース》


  クロスレビューは、ハイバイ公演「リサイクルショップ『KOBITO』」





  次回のクロスレビューがなんと、コレだ!!!



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