ライン京急『自主企画Vol.1』






 ライン京急(山縣太一+大谷能生) 自主企画 Vol.1

■ 日時: 2009年8月4日 19:30〜22:15


■ 会場: 六本木SDLX


■ 出演:

 ライン京急(山縣太一+大谷能生),
 中野成樹+フランケンズ,
 岸野雄一
 岩渕貞太



■ 出演者詳細


ライン京急(山縣太一+大谷能生)  二〇〇八年秋にチェルフィッチュの山縣太一と、sim/masなどで活動する音楽家/批評家の大谷能生の二人で結成された演劇=音楽=ダンスの不定形ユニット。今回は旧作「ベルベラ・リーン」と、新作「手塚の神村のライン京急」(仮)を上演予定。


中野成樹+フランケンズ  二〇〇三年結成。翻訳劇専門の現代演劇カンパニー。珍しいでしょ? 誤意訳(ごいやく:誤訳のうえに意訳)というスタイルで、海外古典を現代風にアレンジしていますが、悪ふざけは嫌いなので「なんだよ意外と普通じゃん」というレベルで、でも確実に手をかけて、極上の気持ちよくスムースな流れを目指してやってます。今回はメンバー1,2をあらそう不器用な男二人で、オールビーの『動物園物語』のミックスを。 上演:『ズーヴァリエーション』(25分) 原作/オールビー「動物園物語」より 誤意訳・演出/中野成樹 出演/福田毅、竹田英司


岸野雄一  俳優・音楽家・著述家等、多岐に渡る活動を包括する名称としてスタディスト(勉強家)を名乗り、WATTS TOWER、スペースポンチやヒゲの未亡人などのユニットで活動中。


岩渕貞太  振付家・ダンサー。大学にて演劇を専攻。在学中から踊りに興味を持ち始め、演劇と並行して日本舞踊・舞踏などを学ぶ。ダンサーとしてAPE・ニブロール伊藤キム+輝く未来・Co.山田うん・Ko&Edge.Coなどに参加。国内外のツアーに多数参加。05年から振付作品を発表。主な作品は『smoke』、『mint』、『double』『タタタ』。07年、清家悠圭との共同作品『yawn』を発表。同年イスラエル振付家Arkadi Zaides作品『DAAT』に参加。08年、創作支援公募プログラム「坂あがりスカラシップ2008」の対象者に選出される。同年代アーティストユニット、群々(むれ)のメンバー。 上演:『double』 振付・音楽・出演:岩渕貞太 音楽remix:金野由之



感想文:《様々なる出会い》




 

 岩渕貞太 (ダンス)



顔を真っ赤に塗ってスイッチON。「あっちの世界へ行きます」というサインのようにも見える。のっけから激しい動き。頭を激しくシェイク。体を執拗にスイングさせる。意識を飛ばして、体の制御を降りきってトランス状態へという動きをひたすら繰り返す。


しかし、それに反して鍛えられた筋肉が「振り切りますよ」という動きを全て統御する。この拮抗状態が見せ場なのではないか。ふつうだったら意識が朦朧としてふらふらとよれたり、体が流されてしまうはずなのにそうならない。


「流される」のではなく、筋肉の神経に意思を送ってあくまでも「動かしている」。動きが固いと言えばその通りだが、どう考えても固い動きになりようのない状況で固い動きになっている。


最後はものすごく長いあいだ頭をシェイク。さすがに息切れして、目がいっちゃっていたけれども、踏ん張り通した。耐えた。あり得ない。信じられない。




 中野成樹+フランケンズ (演劇)



中野成樹+フランケンズ はマクベス44に続き2度目。マクベス44は出演者も多い大きな公演で、今回の作品と比較は難しいけれども、どちらかと問われれば、今日の作品の方が好き。ストレートに面白い!


オールビーの『動物園物語』を読んだことはないのだけど、おそらくオールビー自身も気付いていないだろう『動物園物語』のツボを中野さんはキャッチしているのではないか。


またこのヘンテコな感じの演出がとてもうまくいっていて、例えば役者の声のボリュームの設定とか、なんかもごもご言っていて聞こえづらかったり、でも一時だけものすごくボリュームが上がったり、物凄い早口だったり、無言だったり、役者同士のキョリが近かったり、遠かったり、顔の表情が絶妙だったり。


絶妙!




 岸野雄一(ミュージックショー)



ブラボー!!!!!


なんだろう?この幸せな気持ちは!!!


奇跡的に完成されたショースタイル!《ヒゲの未亡人》!!!


岸野さんはライブを大切にする方なので、皆様もぜひライブをご覧下さい!!!




 ライン京急(山縣太一+大谷能生)(ダンス&音楽&演劇)



大谷さんの才能のマルチっぷりはもう十分わかっている。だから驚かない。ま、ダンスを観たのは初めてだったので楽しかったけど。


でも今回はやっぱり山縣太一さんでしょう。山縣さんはチェルフィッチュの公演で観たことがある。が、こんな人だとは思わなかった(笑)。そう言えば、同じくチェルフィッチュの公演で観た下西啓正さんが主宰している乞局(こつぼね)の公演を観た時もぶったまげた。「全然ちがうやん!」って。


それで山縣さんの場合はダンス(身体)に対する意識が強くて、それはチェルフィッチュとも通じている。今日の前半は「指のあいだに仁丹が挟まる」とか「下あごを意識する」とか、そんな感じの指示が出てその通りに身体を持っていこうとする。これはチェルフィッチュの問題意識と近いかもしれない。でも、そこから発現するものが全然違う。ポーズと言えばそうだけど、もっとアグレッシブというかなんというか、違う。


後半は大谷さんがサックスを吹いて、山縣さんはダンス&芝居。前半の指示に応答するのとは違うけれども、何かに対して応えようとする、反応を確認しようという感じは継続している。とてもコミカルで(こんな人だとは思わなかった)、動きが絶妙!


山縣さんはサッカーのレプリカユニフォームを着ていたけれども本当にサッカー選手みたいだった。今度はスタジアムでお会いしたい。