『昏睡』




  青年団若手自主企画 vol.42》

タイトル: 昏睡



作:  永山智行こふく劇場


演出: 神里雄大(岡崎藝術座)

  



■■出演


  山内健司 


  兵藤公美



■■スタッフ


  照明:伊藤泰行


  宣伝美術:京


  画:神里雄大


  制作:野村政之


  企画:山内健司 兵藤公美


  芸術監督:平田オリザ



■■日程・場所


  2009年8月17日(月)〜26日(水)


  @アトリエ春風舎
   


■■チケット販売


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 《感想文》:観劇に大失敗???



※ 観劇予定の方は、観劇後にお読みください。

※ 観劇するかどうか迷っている方は、観劇前に読んでもらっても構いません。



  





  《1. アンケートに書いた感想》(どちらかと言えばマイナス評価)


一言で言えば、さっぱり分からなかった。神話なのか? 抽象的な話なのか? 何か実際にあった事件に基づいた話なのか? なんだかよく分からなかった。


ただ神里君らしい演出はなんとなく分かった。ただでさえ分からない話が違う方向へ振れていくような、南米っぽい? ボルヘスっぽい? なんとも言いようのない感触がありました。これも演劇? これぞ演劇!?


ありがとうございました。



  《2. 帰りの電車で思ったこと》(完全にマイナス評価)


それで戯曲があまりにも分からなかったので台本を買って帰りの電車で読んだ。やはりさっぱり分からなかった。分からないにも2つあって、1つは「何かあるように思うのだけど、それが掴み切れずにもどかしい思いをする」という分からなさ。いわゆる《宙吊り状態》というもの。もう1つはあからさまに分からないというか、「そりゃわかんねーだろ!」というような《シラケる》分からなさ。今回はどちらかと言えば後者だと思う。


神話のような次元で何か普遍的な話をしているのか?「精神と肉体」というような概念レベルの抽象的な話をしているのか? ある特定の男女、AさんとBさんとまでは言わなくても「戦争を体験した男女」についての話なのか? オムニバスなのか? 一つの繋がった話なのか? よく分からない。例えば「りんごに90°とかけて、すいすいととく。そのこころは?」「なんだかよく分かりません」というようなあからさまなカテゴリーミステイクじゃないか? ファンタジーなのか? マジックリアリズムなのか? いったいなんなのか???



  《3. 家に帰って分かったこと》(採点ミス発覚!!!)


それで家に帰ってネットで調べたところ、高野しのぶさんのレビューを読んで僕の完全な誤読だったと判明。


 《しのぶの演劇レビュー》




 創作ネットワーク委員会+Ort-d.d『昏睡』


どうやら永山智行作『昏睡』は、もともと14名のキャストが演じる「7本のオムニバス」作品だったようだ。それが「オムニバス」であるにも拘わらず、次元も時代も場所も関係も全然違う男女の話であるにも拘わらず、なにか繋がっているような一つの話のようにも思えてしまう不思議な感じのする戯曲だったということだ。



  《4. 結果と課題》(まさか!一転してプラス評価!?)


今回僕は予備知識なしに観劇したので「オムニバス作品」という前提が立てられなかった。しかも今回は7本のオムニバス作品を同じ2人の役者が通しで演じていたし、演出家も俳優も「オムニバス作品であるにも拘わらず1本の作品であるかのように感じてしまう」というこの戯曲の妙味を先取りして、その点を増長させるような作品に仕立てていたように思う。よって僕は完全に取り残されたというか、観劇に大失敗してしまった。



が、しかし改めて考えてみるとこれは失敗なのだろうか? 僕が観劇中「オムニバス作品なのか、1本の作品なのかが判別できずにいた」ということは、この作品をちゃんと読めていたということではないか。むしろ「オムニバス作品」という前提で観てしまうことの方が誤読とも言えるし、そのような演出も失敗と言える。



だから実は、僕は観劇に大成功していた(演出も演技も大成功だった)のだ!!!



が、その感触は決して心地よいものではなかった。これを心地よく思えなかったのは、そもそも心地よくないものなのか? 僕がまだこの感触に慣れていないからなのか? それは分からない。


神里雄大=南米=ボルヘス(ビオイ=カサーレス)というのは安易かもしれないが、中南米の作家の作品をもうちょっと読んでみようと思う。

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