岩井秀人「口語で古典『武蔵小金井四谷怪談』」




 


《演劇》青年団リンク




タイトル: 武蔵小金井四谷怪談


      『落語 男の旅 大阪編』



作・演出: 岩井秀人

■■出演


武蔵小金井四谷怪談


荻野友里青年団) 古屋隆太(サンプル青年団


猪股俊明  端田新菜(青年団



[落語 男の旅 大阪編]


山内健司青年団)  石橋亜希子(青年団)  猪股俊明



■■スタッフ


照明:松本大介(enjin-light)
照明操作:T-BOY 坂口
音響:中村嘉宏
音響操作・演出助手:郷淳子
宣伝美術/土谷朋子(citron works)
製作協力:野村政之
制作:三好佐智子・林香菜・早坂彩
芸術監督:平田オリザ


■■日程


2010年4月17日(日)〜4月29日(木)



■■場所


こまばアゴラ劇場



■■チケット


こちら





《感想文:岩井秀人『笑い』》




  



岩井秀人さん(ハイバイ)と言えば、例えば僕が一番好きなのは『て』でこれは2回(1回目2回目)観ても良かったって言える、すっごくよくできた作品で、また今度5月に再演される『ヒッキー・カンクーントルネード』のような短編作もあったり、阿部和重さんの『グランドファイナーレ』の脚本を書いたり、あと、なんだ快快の前身の小指値の『霊感少女ヒドミ』なんかも書いていたりする、改めてみてみるとけっこうチャンネルの多い、幅広い作品を手掛けている人だ。



それで今回の岩井さんは、どのチャンネルかと言うと、先日日記でたまたま引用したんだけど、なんとなくこのチャンネル。



暖簾を滑って小さな坊主頭が


「御免、一つ剃って貰おうか」


と這入って来る。白木綿の着物に同じ丸絎の帯をしめて、上から蚊帳の様に粗い法衣を羽織って、頗る気楽に見える小坊主であった。


「了念さん。どうだい、此間あ道草あ、食って、和尚さんに叱られたろう」


「いんにゃ、褒められた」


「使いに出て、途中で魚なんか、とっていて、了念は感心だって、褒められたのかい」


「若いに似ず了念は、よく遊んで来て感心じゃ云うて、老師が褒められたのよ」


「道理で頭に瘤(こぶ)が出来てらあ。そんな不作法な頭あ、剃るなあ骨が折れていけねえ。今日は勘弁するから、この次から、捏ね直して来ねえ」


「捏ね直す位なら、ますこし上手な床屋へ行きます」


「はははは頭は凹凸(ぼこでこ)だが、口だけは達者なもんだ」


「腕は鈍いが、酒だけ強いのは御前だろ」


「篦棒(べらぼう)め、腕が鈍いって・・・・」


「わしが云うたのじゃない。老師が云われたのじゃ。そう怒るまい。年甲斐もない」


「ヘン、面白くねえ。    ねえ、旦那」


「ええ?」


「全体坊主なんてえものは、高い石段の上に住んでやがって、屈託がねえから、自然に口が達者になる訳ですかね。こんな小坊主まで中々口幅ってえ事を云いますぜ    おっと、もう少し頭を寝かして    寝かすんだてえのに、    言う事を聴かなけりゃ、切るよ、いいか、血が出るぜ」


「痛いがな。そう無茶をしては」


「この位な辛抱が出来なくって坊主になれるもんか」


「坊主にはもうなっとるがな」

漱石の『草枕』にある文章で、僕もここは好きでよく引用するのだけど、今度5月に出る予定の「アラザルvol.4」に寄稿する予定の論文でも引用しているのだけど、深い意味もなんにもない、ペラペラな感じ。『四谷怪談』という古典であれ、落語であれ、岩井さんの感性の赴くまま「でっちあげる」(いいことばではないけれども、すごくしっくりくる)という軽々しさ=笑い。


以前「笑い」をちゃんと論じようと思って、ベルグソン『笑い』という本に手を出したことがあるのだけど、さっぱり読めなかった。僕にまだ読む力がなかったということだけど、さすがにこれは読まなくていいんじゃないか、読まない方がいいんじゃないかって思った。でもそうすると「笑い」とはなんぞやということにやはりなってしまうのだろうか?


いやいや、つまりこういうことなんだって今日観ていてつくづく思って、すでにここでダラダラと書いたりしていること自体が、「笑い」とはかけ離れていて、「笑い」とはただ単に「笑えばいい」ってもんで、できれば今日なんかも、ぜんぜんチケットも予約しないで、渋谷あたりをぷらぷらしていて、夜にちょっと時間が空いたから、ほなアゴラ劇場でも覗いてみよかーって観に行って、ただ「笑って」帰るっていうのがええなーって思うた。


ぷらぷらっと四谷怪談 ← テキスト化すると怖いがな


草枕 (新潮文庫)

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笑い (岩波文庫 青 645-3)

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 《ハイバイ次回公演「ヒッキー・カンクーントルネード」の旅2010



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