劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』





《演劇》劇ラヂ!ライブ2015




タイトル: 『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』



作・演出: 櫻井智也


■■俳優


高橋和也 


袴田吉彦


川島潤哉


三津谷葉子



■■日程・場所


2015年11月1日(日)午後4:05〜5:55 公開生放送【NHKラジオ第1


2015年12月5日(土)午前9:05〜9:55 再放送【NHKラジオ第1





 《感想文:結婚って!?》




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(1)

土曜日の朝、会社を休んでというか、休みなのだけど、カフェで、iphoneで、ラジオで、演劇を観るじゃなくて聴く!MCRの櫻井智也さんの作品『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』





【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(2)

40分ほどのショートだったから、ストーリーというよりもエチュードに近い感じで立ち上がったケーススタディのよう。





【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(3)

あらすじ




平凡で地味な34歳「安田」の元にかつての友人である「田所」と「武藤」から連絡があり、久しぶりに集まる事になった大学時代の仲良し三人組。それぞれが過ごしてきた十年間を懐かしむ暇もなく、田所は「別れた妻の為に協力してもらいたい事がある」と全員の首根っこを抑えつける勢いで話し始める。安田と同棲中の「ミユキ」も巻き込んで、それぞれの思惑が絡み合い、事態は思わぬ方向へと進んでいくのであった。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(4)

別れたといっても世間一般でいう離婚ではなく、死期を悟った妻がみすぼらしくなってゆくじぶんの姿を夫に見られたくないからと籍を抜いて面会を拒絶する。その妻に夫(田所)は最期まで愛情を、声を届けようとする。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(5)

ただ、この田所っていう男がちゃんちゃらおかしい奴で、動転しているのか、頭がおかしいのか、もうどうしていいものやら分からないものだから、滅茶苦茶なことばかり言う。そんな田所のただただ妻に声を伝えたいという気持ちだけがとにかく突っ走る。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(6)

この暴走する田所にかつての友人の安田と同棲中のミユキともう1人の友人で、田所の妻の兄である武藤がまき込まれてゆく。さあ、ここでどういった化学反応が起こるのか?




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(7)

奔放な性格の田所は現実味のない案を出す。やったこともないバンドを結成してラジオに投稿して、ラジオで俺たちの曲を流してもらって妻の耳へ、妻の中へ入ろうという。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(8)

対して安定志向の安田はやや取り乱しながら、そのアイデアの現実味のなさ、実現性の低さ、わざわざそんなことをやる必要はない、もっと端的な方法があるはずだと説き伏せる。しかしなぜか同棲中のミユキは田所と波長が合ってしまって、バンド案にノリノリで加わろうとする笑。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(9)

そして、もう1人の武藤はというと、奔放な性格ではあるのだけど、田所とは対照的に何事にも欲望も気力も示さない世捨て人のような人。ざわつく田所とそれを必死に抑えようとする安田とは明らかに温度差がある。ただ人との関わりを完全に捨てたわけではなく心は動いている。



【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(10)

それで4人でああだこうだと延々と言い合うのだけど、最終的にどうなるかと言うと、もう亡くなる寸前の妻から電話がかかってくる。妻はすでにほとんど言葉を話せない状態で声というか、それはもう音でしかないのだけど、その音に対して必死に言葉で語りかける、会話が成り立たないのは分かっていながらも、とにかく必死に話しかける。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(11)

会話にはなっていないので、話の内容は全然通じていないのだけど、なんとか盛り上げよう、応援しようという気持ちは、愛情は、心は、おそらく妻には通じている。この通じ合うっていう感覚は、あうんの呼吸というのとも近い何かだと思うのだけど、ここぞという時に、ここぞという場面で、不思議と気持ちが通じあう(この妻がなんの取り柄もない田所を夫として選んだのが謎なのだけど、こういうことなんじゃないかと)。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(12)

そしてオチというか、この作品のテーマだと思うのだけど、亡くなる妻に声を届けようとする田所にまき込まれることで、結婚をためらっていた安田がミユキとの結婚を決意する。ありがちな話といえばそうだけど、ここは重要だと思う。田所夫妻のあいだにある、お互いを引きつけ合う力というか、何か魂のようなものが安田とミユキのカップルにポンッと投げ入れられたというか、いや、またなんだかオカルトっぽい話になってしまったけど、ま、そういうことだよね、結婚するって。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(13)

あと気になったのは、これは本筋の話ではなく、ちょっとしたエピソードとして語られただけだったけど、亡くなる妻を看病していた田所が看護士と浮気していたという。 これじゃ、純愛ドラマが台無しじゃん!っていうんじゃなくて、ここも、まー、分からんでもないなーって。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(14)

妻が死にそうで苦しんでいるのに浮気なんてあり得ないし、絶対にダメだけど、人の心って動いてしまう。看病って実際辛いしさ、看護士さんって、何で赤の他人にここまでできるの?ってくらい献身的だったり、逆に看護士さんから見れば、必死に看病する旦那さんが魅力的に見えてしまったり。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(15)

戒律と言ったら大げさだけど、ルールとして縛るとか、結婚したら浮気は許されないというか、自分に課したルールを守る、守らないという形式的な問題ではなく、重要なのは内容ではないかと。ルール上は禁止されていても、心って動いてしまうし、たとえ異性の相手にメールしないといった自分のルールを守っていたとしても、心が動いていたら事実上浮気だし、その動いてしまった心とどう向き合うかってことが大切なのではないかと。いや、別に石田純一礼讃とか、浮気したり、離婚してもいいよって、そういう意味じゃ決してないのだけど。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(16)

全然関係ないかもしれないけど、僕は中学・高校時代キリスト教系の学校に通っていたけど、けっこう厳しかった。特に校則(戒律)に違反した場合の罰則が厳しくて、退学にさせられた生徒もけっこういた。たしかに万引きとか許されることじゃないけど、今から思えば、自我がまだあやふやな時期で、誘惑にも流されやすい。彼らがやったことは犯罪ではなく悪ノリ程度の話だったのではないかと思う。もし、退学にして履歴に傷を残すことなく救っていたとしても、彼らは立派な社会人になったのではないかと、僕は思う。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(17)

この作品はそういったルールで縛ろうという価値観や理想をかかげてどうこうという意識が希薄だったように思う。このあたりは、櫻井智也さんの哲学なのかと。櫻井さんは性善説に基づいているというか、人を根本のところで信頼しているからだと思うのだけど、もっと自由に人間の生き様を描く。ピュアななかにも不純なものはあるし、ピュアな人も間違ったことをするし、でもだからといってピュアが否定される訳でもないというか、かといって開き直ればOKという訳でもないし、なかなか説明するのは難しいけれど。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(18)

理想と現実。人生において理想を描いたり、ヴィジョンを持つことは必要だと思う。ただ現実はその通りにはならないというか、人と人との関係、人の気持ちは日々刻々と変わっていくから、そういったいろんなことを柔軟にちゃんと受け入れて、そのつど方向を修正していかないと何も始まらないのだなと僕も思う。




【演劇】劇ラヂ『あさはかな魂よ、慈悲の雨となれ』(19・終わり)

僕自身は結婚したことないからピンとこないけど、結婚って何やろ? 夫婦って何やろ?って、あれこれ思って考えた土曜の朝でした。力作!熱演! ありがとうございました☆






   MCR過去公演 《感想文》



我が猥褻、罪なき罪


死んだらさすがに愛しく思え


言うなればゲシュタルト崩壊













阪根タイガース


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