パラドックス定数『深海大戦争』
《演劇》パラドックス定数
タイトル: 『深海大戦争』
作・演出: 野木萌葱
■■出演
植村宏司 西原誠吾 井内勇希
千代田信一 大柿友哉
森田ガンツ 小野ゆたか
■■スタッフ
照明:伊藤泰行 衣裳:渡辺まり
音響:田中亮大 音響操作:杉山碧
舞台監督・舞台美術:吉川悦子
撮影:渡辺竜太 販促:副島千尋
制作運営:岡本朋子
制作:たけいけいこ 今井由紀
■■日程・場所
2016年4月5日(火)〜 10日(日)@上野ストアハウス
《感想文:深い》
きょうは上野動物園に抹香鯨と大王烏賊を観に行ってきた。
んっ!?
いやいや上野動物園に魚はいないから水族館だ!
そうそう上野水族館に行ってきた。
んっ!?
上野に水族館はないから、あれどこだ?
もとい!
上野ストアハウスに演劇を観に行ってきた。
深海大戦争
〜 抹香鯨vs大王烏賊 〜
大海原で繰り広げられる壮大な戦いであった。そのため前回は時間切れで結末が描かれなかったのだけど今回は描かれた。ネタバレになるから言わないけど、
なるほど…
深い…
マッコウクジラはゴジラのように人間を襲ってはこないけど、彼らは彼らなりの戦いを海の底で繰り広げている。そこには人間は関わっていないはずなのだけど、マッコウクジラvsダイオウイカの上空では人間vs人間の戦いも繰り広げられている。そして人間の影が深い深い海にも忍び寄る。
う〜ん
夏目漱石の『草枕』だったか、山奥の温泉宿を舞台とした男と女のラブロマンス? あれも直截的には書かれていないのだけど、戦争の影が忍び寄ってくるのが暗に示されている。よのなかの動向に否定的であろうとも、人里からどれだけ離れようとよのなかとの関係を絶つことはできない。この世のすべては連鎖している。
海の底もしかり
今回はかなり擬人化した描き方だったけど、純粋に水の生物を描こうとしても、そこには人間が色濃く出てしまう。人間社会の縮図と化する。知性を持たないはずの大王烏賊のなかにもテクノクラート化する烏賊なんかがでてきたり、神の存在を悟る生き物がでてくるのもあながち嘘とも言えない。
そして結末は!
望むと望まざるにかかわらず、あれが自然の姿なのだろう。
自然の斉一性
翻って、
人間はなぜ戦争をやめられないのか?
そこに希望はないのか?
深い
《追記》
あと本来の姿を隠しつつ鯨に媚を売る鯱の立ち位置とか、氷山の立ち位置も興味深かった。自然界を描こうと思えば氷山のような時間のスケールが必要になってくるし、氷山の「観る」のではなく「観させられる」という立ち位置と、「オレは生まれることができない。あることしかできない」というのはいいセリフだと思う。
今回の俳優陣のMVPは大柿友哉さん
大柿さんの演技は、《音楽劇》ファンファーレなどで何度か観たことがある。飄々としているけど、実力派ぞろいのパラドックス定数俳優陣のなかにいてもまったく負けていなかった。皇帝企鵝という名前だけが一人歩きして実体と釣り合っていない生き物で、なんとも言いようのない立ち位置だったけど、消え去ることなく存在感をうまく表現していた。
けっきょく、どっちかと言えば、きょうも俳優に魅せられていた。《演劇》は、やっぱり良くも悪くも俳優のチカラによって成り立っているのだと思う。
パラドックス定数 過去作品《感想文》
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