『8月の家族たち』




   



《演劇》シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ 2016




タイトル: 8月の家族たち



作:トレイシー・レッツ


翻訳:目黒条


上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

■■出演



麻実れい


秋山菜津子


常盤貴子


音月桂


橋本さとし


犬山イヌコ


羽鳥名美子


中村靖日


藤田秀世


小野花梨


村井國夫


木場勝己


生瀬勝久



■■スタッフ



美術:松井るみ
照明:関口裕二
音響:水越佳一
衣裳:伊藤佐智子 
ヘアメイク:宮内宏明
擬闘:栗原直樹
演出助手:坂本聖子
舞台監督:福澤諭志
宣伝美術:雨堤千砂子
宣伝写真:江隈麗志
宣伝衣裳:伊藤佐智子
宣伝ヘアメイク:勇見勝彦 遠山美和子


■■日程・場所




《東京公演》
2016年5月7日(土)〜5月29日(日)@Bunkamuraシアターコクーン


《大阪公演》
2016年6月2日(木)〜6月5日(日)@森ノ宮ピロティホール






《感想文》



現代アメリカの病理




『8月の家族たち』は現代アメリカの病理を描いた作品と言える。アメリカは今、大統領選を控えていて、トランプなんかが出てきている。あれは演技というか選挙で勝つための戦略としてやっているのだろうけど、あの現象がいまのアメリカを象徴している。端的に言って、物語の不在、アメリカはアイデンティティーを喪失している。



「トランプとは何か?」 あるいは「オバマ大統領とは何だったのか?」 というテーマを考えるのもよいけれど、もう少し掘り下げて「アメリカとは何か?」 を考えてみたらよい。その際に『8月の家族たち』は格好の題材となる。単なるエンターテイメントではなく、よく考えられているというか、戯曲が上質で、噛み応えがある。



アメリカって、いつも何かにおびえている。自分たちがネイティブではないという事実が、感覚的にも抜けきらないのだろう。地に足がついていないというか、冷静さを失っていて感情の起伏が激しい。日本に比べたら、自己主張が強く、自分の意見をはっきり言うとはいうけれども、すべてそういった不安の裏返しではないか?



アメリカ的なるもの」



を考えるときに、東海岸/西海岸、NY/LA、ブロードウェイ/ハリウッド、演劇/映画という対比は面白いけど、これらは日本にいながら考えても比較的分かりやすい。



そうではなく、日本にいて一番分かりづらく、それでいて一番興味深いのは、アメリカの南部や中西部。アメリカ的なるものを考える上で、僕がいま一番読みたいのはフォークナーなのだ。でも、じっくり読んでいる時間がないから、いまはカレッジフットボールなんかを観ながら、アメリカの地域性を感じ取ろうとしている。



『8月の家族たち』の舞台はアメリカ南中部のオクラホマ州。カレッジフットボールで、オクラホマ大学やオクラホマ州立大学がそこそこ強いので、僕はどこにあるかすぐにイメージできるけれども、大抵の日本人はオクラホマ州ってどこ? って感じだろう。さらに劇中に出てくる地名が、コロラド、マイアミって感じだから、この作品はアメリカの地域色がかなり強く、日本人にはピンとこない。



これほどアメリカ色の強い作品を日本の劇場で、日本の俳優が演じることにどれほどの意味があるのか? これはなかなか難しい問いだけれども、結果的に非常に面白い体験だった。



何が面白いかについては、ちゃんと書きたいけれども、今日は、さわりだけ説明する。ある文章を読んだ影響で、GW中にソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』をDVDで観たのだけど、これがすごくよかった。ソフィア・コッポラが東京を撮った作品なのだけど、この違和感たるや!



でも、この違和感は非常にいい違和感だったのだ。







『8月の家族たち』を日本で演じる違和感に通じている。



あと内容的には、最近観た演劇のなかでは意外にも月刊「根本宗子」第12号『忍者、女子高生(仮)』とシンクロしていた。



いい作品だった☆






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