東直子『薬屋のタバサ』




   




先日、連投ツイートした東直子さんの小説『薬屋のタバサ』の感想をまとめました。お楽しみください☆





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【夏休み・読書】

小説、東直子『薬屋のタバサ』を読了。文体も世界観もあまり味わったことのない感触。




《1》【薬屋のタバサ】

タバサという謎の人物の感触から、初めは女性だと思っていたら、途中で男性だとわかった。男性だと分かってからも、このタバサという人物がどうも好きになれない。素っ気ないというか、人間味がなく、冷たい。




《2》【薬屋のタバサ】

でもタバサは不思議な力をもっていて、まちの人から慕われている。慕われているというか、特別な人として受け入れられている。吉本ばななが、近所の人々と接するなかで、どうもわたしの父親は普通の人ではないらしいと感づいたという、あの感じだろうか。




《3》【薬屋のタバサ】

吉本ばななにしろ山田詠美にしろ、作中に世間一般とは違った角度で理想化された男性がでてくる。このタバサという男性も東直子が描いた理想の男性ということになるのだろう。




《4》【薬屋のタバサ】

ただこの理想というのが一筋縄では理解できない。タバサは薬を調合して人を助ける。でも永遠の命を授けるわけではない。永遠が理想ではない。タバサは人を救うために力を尽くすが、あくまでも《自然の摂理》に従う。




《5》【薬屋のタバサ】

自然というのはしばしば理想化されて言われる。しかし必ずしもそうではない。母なる大地とよばれるように自然は我々を受け入れてくれるようでいて、しかし今日も大雨、自然災害という現象が頻繁におこるように、我々を突き放す。




《6》【薬屋のタバサ】

タバサを好きになれないという感覚は、こういった自然の二面性に対する受け入れ難さに通じている。しかし、それだけでは説明できない。




《7》【薬屋のタバサ】

この作品では、主人公の山崎由実という女性が訳ありなのは初めから読み取れる。過去になにかあった、何かは分からないけれども、つらい過去を背負っているのは分かる。そんな由実をタバサが癒してゆく。




《8》【薬屋のタバサ】

ただ、逆にタバサもおかしいと感じる場面がしばしばでてくる。人を救ったり、癒しているタバサ自身が何かつらい過去を背負っている。そのことに由実はけっこう早い段階から気づいている。女性の第六感だろうか? そんな由実がタバサを癒してゆく。




《9》【薬屋のタバサ】

タバサ=自然、由実=人間として読み解けば、自然と人間の関わりについて、はっとする気づきがある。自然も人間を求めている。






   ピノコ

すぐによくなゆわ 世界一の先生が 悪いところは みんな治ちてくれたんらよ



   
   







《10》【薬屋のタバサ】

タバサ=男、由実=女としてそのまま読み解いても、男女の関わりについて、はっとする気づきがある。男女関係においても一方的な支配関係は成り立たないという摂理。




《11》【薬屋のタバサ】

由実がタバサのところに居候しているので、タバサが由実を受け入れているのだけど、一方的な関係ではなく、由実がタバサを受け入れているという関係でもある、この男女の微妙な感じ。どっちが先生でどっちが生徒? どっちが医者でどっちが患者?




《12》【薬屋のタバサ】

個人的に興味深かったのは、僕が評価すれば、このタバサという男性は完全にNGなのだけど、意外にも由実がすんなりと受け入れている点。タバサは特別な力があって社会的貢献はしているけど、男性としての魅力はゼロに近い。女性にとってこの手の男は本当にOKなの???




《13》【薬屋のタバサ】

僕=読者=男性、東直子さん=作者=女性、という男女の感覚の違いで興味深かったのは、詳細は書かないけど、「生」(産む)ことの感覚の違い。「法律的にダメだからやっぱりダメなんじゃない」って言ってしまいそうなのだけど。




《14・完》【薬屋のタバサ】

東直子さん=歌人ということもあり気づきにあふれた小説だった。自然、食、言葉に対する感覚の鋭さを味わうとともに、女流作家としての恐ろしさ、性、生(死)に対する独特の感覚に飲み込まれた。読了後もなんとも言えない余韻がある。






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