柴幸男『少年B』



 りたーんず♥六番勝負!!!!!!《第三試合》(4月27日)

タイトル: 『少年B』



作・演出: 柴幸男青年団

 
 


■■出演


井上みなみ


岡部たかし


大柿友哉(害獣芝居)


玉井勝教


山田宏平(山の手事情社



■■日程・場所


2009年4月19・24・27・30日、5月2・5・6日


こまばアゴラ劇場


■■チケット販売


りたーんずWEB



感想文:《どまんなかのストレート》




 



柴作品は昨年観た『御前会議』以来2度目。見た目はオーソドックスなのだけど、しかし、観者に強く響いてくる。それは細部が、1つ1つのシーンが、非常に緻密に創られているからだ。そういった細部への詰めを怠ると観者の目に留まらず流れてしまうのだけど、きっちりと詰めてあるのでちゃんと観者の目に留まる。この印象は前回と変わらず今回も同様だった。


今回のテーマである14歳と言えば、柴さん自身からすればすでに過去となってしまっており、それだけではすでにリアリティを失っている。そこで柴さんは、現実と舞台とを結ぶ糸を幾重にも張り巡らした。


『少年B』という主題は、もちろん「少年A」を受けている。それがリアルワールドと舞台上の世界を結びつける一本目の糸。俳優はすでに大人だけど、そのなかに現役の中学生をひとり潜り込ませている。これが二本目。登場人物の名前を俳優の実名としているのが三本目。主役の岡部たかしさんの37歳という視点をそのまま取り込んでいるのが四本目。岡部さんは中学時代お笑いが好きで漫才をやっていたし、実際芸人を目指したけれども、それは実現せず、今は役者として舞台に立っている。これは舞台には登場しない作家の柴さんの経歴とも重なってくる。これが五本目(あげればきりがないのでこれぐらいにしておく)。



さて。今回の『少年B』の特徴を一言で言えばこんな感じ。



14歳というテーマで何が書けて、何ができるのか?を問うて、さまざまに考えた結果、投じたのは、なんと、どまんなかのストレートだった!!!

プロレベルでどまんなかのストレートを投げることはまずないのだけど、それでも確信犯で投じることもなきにしもあらず。ただし、これが成功するためには、インハイに強いストレートを投げ込めること。あるいは、アウトローのコントロールが抜群であることが必須である。つまり、いずれかを満たしている一流投手に限られる。


演劇で言えば、インハイにガンガン投げ込むタイプとしては多田さん(東京デスロック)があげられるが、柴さんはアウトローが本線のコントロール重視の演出家・作家と言えるだろう。


さてさて。今回、どまんなかのストレートが吉と出たことで、逆に柴さんが一流であることが明らかになったのだけど、それとともに柴さん自身のどまんなかが分かったような気がする。


柴幸男とは、何よりも役者の能力をフルに引きだすことを信条にした演出家・作家である。


昨年、予備知識なしで『御前会議』を観た時、私は柴さんをてっきり年上の演出家だと思っていた。それが蓋を開けてみれば、82年生まれとはね。。。こういう玄人好みの人もいるのね。80年代生まれには。。。




緻密な柴作品、そして役者の演技を十分に堪能してください。



観劇をオススメします。











※ photo by montrez moi les photos




 《柴幸男の1冊》



黄金色の祈り 文春文庫

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阪根タイガース


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