Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『가모메カルメギ』
《演劇》Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ
タイトル: 『가모메カルメギ』
原作: アントン・チェーホフ「かもめ」
脚本・演出協力:ソン・ギウン
翻訳:石川樹里
ドラマトゥルク:イ・ホンイ
演出: 多田淳之介
■■出演
夏目慎也 佐藤 誠
佐山和泉 間野律子
ソン・ヨジン イ・ユンジェ クォン・テッキ
オ・ミンジョン マ・ドゥヨン チョン・スジ
チェ・ソヨン イ・ガンウク
■■日程・場所
[北九州公演]
2014年11月22日(土)〜23日(日)@北九州芸術劇場 小劇場
[横浜公演]
2014年11月27日(木)〜30日(日) KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ
《感想文:あなたとわたし(너랑 나)》
【演劇】『가모메 カルメギ』(1)
日常のルーチンから開放されたいがために劇場へ向かうというのが常だが、きょうは日常から突き落とされて「現実」を見せつけられるという体験だった。
【演劇】『가모메 カルメギ』(2)
ロシアのチェーホフ原作の戯曲を韓国のソン・ギウンが脚本化し、日本の多田淳之介が演出し、韓国と日本の俳優が演じるという作品を観るのは非常に興味深い体験だった。
【演劇】『가모메 カルメギ』(3)
日本にいて、ヨーロッパにおけるロシアの辺境性やモスクワ(都市)/キエフ(田舎)の対比を理解するというのは難しい。欧米の作品を日本にストレートに持ち込めば分かりやすいというものでは決してない。
【演劇】『가모메 カルメギ』(4)
対して、今回のように欧米の作品が韓国を経由して日本に入ってくるというのは、確かに原作との振幅のズレが増長するけれども、思ってもみない共鳴が起こる。
【演劇】『가모메 カルメギ』(5)
例えば、ソン・ギウンさんが言っていたけれども、『三人姉妹』の有名なセリフ「モスクワへ!」を「京城へ(ソウルへ)!」にただ変えても物足りない。
【演劇】『가모메 カルメギ』(6)
1930年代の日帝時代の朝鮮を描き、「京城へ!」(外地)ではなく「東京へ!」(内地)とすれば含みが出てくるかもしれない。
【演劇】『가모메 カルメギ』(7)
【演劇】『가모메 カルメギ』(8)
東京デスロックという観点から言えば、ずっと演劇の形式を問う作品が続いていたけれども、今回は久方ぶりの演劇だった。いや、ま、こういう言い方をすると語弊があるかもしれないがしかし、今回は演劇だった。
【演劇】『가모메 カルメギ』(9)
東京デスロックで言えば、今回の作品は、シェイクスピアのシリーズというよりも、三好十郎『その人を知らず』に感触が似ていた。
【演劇】『가모메 カルメギ』(10)
東京デスロックにおいて一見異色の作品だけど、三好十郎『その人を知らず』は重要な作品で、東京公演休止前最終東京公演だったということもあるし、多田淳之介の演劇を理解する上で重要な作品だと思う。
【演劇】『가모메 カルメギ』(11)
《参考》拙著・創作評論
–東京デスロック的リアリズム–
【演劇】『가모메 カルメギ』(12)
じぶんじしんで改めて読んでも思うけれど、多田淳之介が演劇でやろうとしていることは、例えばオバマ大統領がアメリカでやろうとしていることと同じくらい理解が難しい。
【演劇】『가모메 カルメギ』(13)
オバマ大統領が個人の利益を最優先するアメリカ国民に対して、「自分の利益を二の次にせよ」と問う政策はアメリカ全体が逆立ちしても理解されないであろう。そもそもアメリカにはそういう土壌がないから。ないところに植え付けるというのは物凄く難しい。
【演劇】『가모메 カルメギ』(14)
他方、多田淳之介が韓国と日本とを行き来してやっていることも理解が難しい。現状の両国の間にはまだまだ溝がある。多田のように両国間にインタラクティブな関係性を築く、もっと言えば、境界を取っぱらってしまおうと本気で考えている人がどれほどいるのか?
【演劇】『가모메 カルメギ』(15)
そんな多田淳之介が、1930年代の朝鮮を舞台にした作品を手掛けるというのは、興味深い。
【演劇】『가모메 カルメギ』(16)
今回の作品は、チェーホフ『かもめ』が、1930年代の朝鮮を舞台に脚本化された訳だが、これは明らかに原作を読むのとは違った体験だった。
【演劇】『가모메 カルメギ』(17)
チェーホフ『かもめ』を原作を通じて理解しようとすれば、1896年当時の状況を考慮して理解できなくもないがやはり難しい。どちらかと言えば、ゲーテ『親和力』などに引きつけて、ある種の運命論、ヨーロッパ文学の文脈で理解しようとしてしまう。
【演劇】『가모메 カルメギ』(18)
対して、Doosan Art Center+東京デスロック+第12言語演劇スタジオ『가모메カルメギ』はどうか?
【演劇】『가모메 カルメギ』(19)
ソン・ギウンをはじめ韓国の作家は、良くも悪くも構造を詳細に見抜いて描こうとするので、今回の作品もガチガチと言えばそうだが、そこに他者の眼差し、多田淳之介が介入している点がやはり成功している。
【演劇】『가모메 カルメギ』(20)
韓国の作家に比べて、日本の作家は作品の構造を見抜くのが下手というか、ぬるい。多田淳之介の場合は下手というか、構造だけでおわらせない人で、一言で言えば、デストロイヤーなので、端的にこのコンビはうまくいっている。
【演劇】『가모메 カルメギ』(21)
1930年代の日帝時代の朝鮮を描いているので、歴史性に対する意識、翻って現在性に対する意識が相当強く、1930年代を描いた舞台でありながらK-POPやJ-POPが爆音で鳴り響く☆
【演劇】『가모메 カルメギ』(22)
★爆音★
【演劇】『가모메 カルメギ』(23)
あ、もちろん、冬のソナタも!
【演劇】『가모메 カルメギ』(24)
作品の分析はまだまだこれからなのだけど、興味深かったのは、パフュームや2NE1が1930年代に爆音で流されてもそんなに違和感なかったってことと、作品の基調になっているのがソナタではなくボレロであったということかなー☆
【演劇】『가모메 カルメギ』(25)
(感想ひとまず終わり)
【演劇】『가모메 カルメギ』(26)
刺激的な作品をありがとうございました!
好評?連載中!こちらもよろしく!!
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