杉原邦生演出『14歳の国』



 りたーんず♥六番勝負!!!!!!《最終戦(5月2日)

タイトル: 『14歳の国』



作:  宮沢章夫 


演出: 杉原邦生
   (KUNIO/こまばアゴラ劇場〈サミット〉ディレクター)

 




■■出演


真田真


菅原直樹


山崎皓司(快快


鈴木克昌


小畑克典(青年団



■■照明


伊藤泰行



■■音響操作


高橋真衣



■■演出助手


泉沙央里



■■日程・場所


2009年4月21・24・26・29日、5月2・4日


こまばアゴラ劇場


■■チケット販売


りたーんずWEB



感想文:《宮沢さん、絶対みてください。》




 


本作品については、絶賛されたり、酷評されたり、もうなにがなんだか分からない状況で、公演が始まってから予約した回までしばらく時間があったので、観る前に原作を読んで予習してから観劇した。




14歳の国

14歳の国




まず、原作を読んで感じたのは、この戯曲は不親切だということ。言い換えれば、宮沢章夫氏の極めて私的な作品だということ。書籍に収められている「上演の手引き」や「あとがき」といった宮沢氏自身によって書かれた解説には逐一頷けるし、表面的な演出、気の利いたユーモアに笑ったりはするのだけど、戯曲そのものには共感できるところが全くない。



サカキバラ事件にインスピレーションを受けて書いたこと。宮沢氏によるサカキバラ事件の解釈、「子供っぽい事件を大人ではなく、子供が本当にやってしまった」(りたーんず公演チラシ参照のこと)。サカキバラ事件を起こした少年Aが14歳だったからと言って、14歳の少年をそのまま登場させるのではなく、14歳を舞台に登場させない作品をつくったこと。第一場の「何も起こらない感じ」とベケットゴドーを待ちながら』、第二場と「事件の意外な顛末」。宮沢氏が考えたこと、やろうとしたことは逐一頷けるし、理解できるのだけど、戯曲そのものには全く共感できなかった。



もちろん、初演が1998年で、サカキバラ事件が起こった1997年の翌年の作品なので、この事件を説明不要の大前提として書かれていること。それから10年経った今では、当時のことが忘れ去られてはいないけれども、当時の空気が風化してしまっているので、説明なしでは読みづらいということもあるだろう。しかし、それを抜きしても宮沢章夫『14歳の国』という作品そのものは、極めて受けとめにくい。



そもそも、この作品を書くインスピレーションの源である『サカキバラ事件』も奇妙だった(奇妙というのが適切かどうか分からないけれども、それ以外に適当な言葉が見当たらないので、とりあえず奇妙と言っておく)。先日インターネットで検索してみたら、ウィキペディアにかなり詳しいレポートが書かれていたので読んでみたのだが、少年Aはキレたというよりは整然と考えた上で実行しているように感じられた。「そうだったのか」と逐一頷いてしまった。事後的に分かるという後付けの理解ではなく、リアルタイムの少年Aの思考に頷けた。しかし、事件そのものについては、やはり奇妙だという他ない。



当時(1997年)、14歳だった少年Aが起こした『サカキバラ事件』から、当時41歳(大人)だった宮沢章夫がインスピレーションを受けて『14歳の国』を書いた。そして、当時少年Aと同じ14歳だった杉原邦生が、26歳(大人)になった今(2009年)、『14歳の国』を演出して公演した。



絶賛されたり、酷評されたり、もうなにがなんだか分からない



「なにがなんだか分からない」事態が起こることが分かり易すぎるぐらいだ。起こっている現象があまりにもリテラルだ。これも踏まえて奇妙だ。このねじれ入れ子構造、本当に嫌だ。



さて、杉原邦生演出『14歳の国』。終演後のイベントで、杉原の大学院での担当教官でもある森山直人氏(演劇批評家・京都造形芸術大学)のコメントにもあったように、散々言われていたので覚悟していたのだけど、思っていた程ひどくはなかった。ちゃんと笑えるところもあったし、話の展開にもついて行けた。役者もよかった。ただ言われていたとおり、終演時に拍手はできなかったし、帰宅してふり返ると、やはり「奇妙だ」という感じが沸々と湧きおこってきた。



これを言うとネタバレになるので公演終了まで伏せておくが、『サカキバラ事件』に対してはどうか分からないが、少なくとも原作者である宮沢章夫氏に対しては完全に裏切った演出であった。また原作の『14歳の国』そのものに共感できなかったと同様、杉原邦生演出の『14歳の国』そのものにも共感できなかった。



この奇妙な連鎖には観客という位置からは突き入る隙がない。もし観客という第三者として許される視点があるとすれば、少年Aに見てもらうのは無理だとしても、宮沢章夫氏が今回の作品を見て何を思うか、何が起こるかという関心である。



『14歳の国』の原作者である宮沢章夫氏は、杉原邦生演出『14歳の国』を観るべきだし、杉原邦生は、自身が演出した『14歳の国』を原作者の宮沢章夫氏にみせるべきだ。可能ならば生で、無理ならば録画でもいいから。



 宮沢さん、絶対みてください。





(※1)この感想文を読んだら、私自身すごく深刻な文体に感じられビックリしてますが、そんなことないんです。この体験、この感触をどう説明したらいいのか難しいんですけど。杉原邦生さんは好青年ですし、作品もちゃんと観られます。まだもう1回(5月4日)上演されるので、ぜひご覧下さい。こんな奇妙な体験をすることは、もう二度とないでしょうから!?




(※2)ぼくは、なんと杉原さんから次回作の招待状まで頂きました。ありがとうございます!!!!!



※ photo by montrez moi les photos






 《杉原邦生の1冊》



月刊 EXILE (エグザイル) 2009年 05月号 [雑誌]

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阪根タイガース


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